無意識日記々

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take your sea route

その海路と対になっている曲がテイク5だ。前者が先にULTRA BLUEに、後者が後にHEART STATIONにと2年のブランクを経て発表されたが、制作時期は近接していたようで幾つもコンセプトに共通点が見られる。

まず、海路の冒頭、『船が一隻 黒い波を打つ』の部分であるが、これは前作DEEP RIVERのコンセプトであった"河"に相対して"海"を意識した一節だと解釈できる。

ULTRA BLUEの基本的なイメージ・コンセプトは"青空"で、それはタイトルが"超青"である事からもわかるし、前作のインストが河に架ける"橋"(Bridge)であったのと同様、同作インストも大空に跨る"蝕"(Eclipse)であった。しかし、海が青空の"写し鏡"として青々と輝いている事も忘れてはならない。ULTRA BLUEとは青い海の事でもあるのだ。

さすれば"黒い波"とは夜の海、或いは日蝕の時の海と考えるのが普通だ。が、一方でこの"一隻の船"は地球自身(小さな地球)であるという解釈もあるのだ。(私のオリジナルでない) そう考えると次の『春の日差しが私を照らす』というのは地球が直接太陽の光を浴びる事だと解釈できる。なるほど、それなら筋が通る。

そればかりか、この海路の続編、兄弟作としてテイク5をみた時の見通しまでよくなる。今の解釈によって、海路に"宇宙という黒海をいく星"としての(春の)地球という描像が可能になったが、これにより『真冬の星座だけが私の恋人』というテイク5のフレーズとしっかり対が出来るのだ。太陽を挟んで、海路とテイク5がちょうど反対側に位置するのである。

そして歌のラストである。『今日という一日も最初から決まっていたことなのか』と『コートを脱いで中に入ろう//今日という日を素直に生きたい』と、両者とも一日の終わりをイメージさせるフレーズで終わっている。これも大きな共通点であるが、そこに流れる感情は微妙に異なっている。海路では如何に努力しても運命に翻弄されている無力感とそれでもなんとかしようとする気持ち(『次は君次第』)とが綯い交ぜになっているが、テイク5では運命そのものを慈しんで受け入れよう(『今日の気分は最高です』)という気持ちが窺える。同じ時期に制作されたにしても、発表のブランクである2年間の間の心境の変化が、この違いに結びついた気がしてならない。