無意識日記々

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希望的観測行為

石黒正数それでも町は廻っている」第9巻が発売されて一週間、Webでも書評が続々とUPされているが、そのどれもが絶賛に近い。アニメ化されてメジャーになり書店でも新刊が平積になって暫く経つが、こうやって原作に触れてくれる人々が増えてくれるのは喜ばしい事である。

特に第71話の評判が高く、それを話のタネにしようかとも思ったのだがまだ発売されて日が浅いしもう暫くは寝かせておく事にしようかな。

この「それ街」、基本的に一話完結でさくっと気軽にゆるゆると読める所が魅力なのだが、実に細かい所でエピソードの伏線が散りばめられていて、その仕掛けを追っていくだけでも面白い。巻をまたいで(何年もかかって)あれはこうだったと判明するので、コミックスを揃えないといけないけれど。

更に、涼宮ハルヒのようにエピソードの時系列がシャッフルされており、それも何年にも跨る為作品全体が地味メタ謎解きモードになっている。

このblogも、出来ればそれ町の伏線を紐解くように、宇多田ヒカルというアーティストの時間を超えた伏線の数々を指摘していきたいと常々思いながら進めているのだけど、なかなかに難しい。

実際、わかりやすい例といえば嘘みたいなI Love YouのメロディーがSimple And Cleanに登場したり、UtaDAも跨いでHotel LobbyのメロディーがKiss & Cryに登場したりといったケースがあるが、これは謎解きという程難しい話でもない。

音楽というジャンルは基本的に"一話完結"な為、そういった指摘が通る例は数少ない。尤も、今日新譜が発売になるDream Theaterなどは9年かけて同じ主題を扱った12部作を4作に渡って収録し続けるなど、大胆なケースも存在する。まぁこういうのはリスナーを激しく限定するから…と書こうとしたが前作は全米6位だった。UtaDAよりずっと成功しているな。

歌詞の面で、ヒカルが「この曲はあの曲の続編」と言った例は、今の所思いつかない。基本的に登場人物に固有名詞が出てこないので、実は続編なんだけど、というパターンも、実はあるかもしれない。イントロのメロディーをシンクロさせ、歌詞の中でも『情熱に』を繰り返すKeep Tryin'はPassionの続編である事を意識して作られているといえるが、そんなにあからさまでもない。

しかし、登場人物に固有名詞が当てはめられていないという事は、始終歌の主人公は宇多田ヒカルだという解釈も成り立つ。その視点に立ってみれば、様々な曲同士の緩やかな繋がり具合が、見えてくるかもしれない。石黒正数のように確信的に予め細かく設定を決めて描いているのとは異なり、気づき自体も曖昧かもしれないが、歌ってる本人も気づいていない共通点などを炙り出していけたらなぁ、とそれ町の嵐山歩鳥の無防備な顔を眺めながら思ったのだった。