部分追加された資生堂のインタビューでヒカルはこう語っている。
『「ヒカル」はどちらかといえば男の子の名前です。私自身、「女」か「男」かという感覚がないので、その中間にあるような、どちらにも当てはまるこの名前が好きです。私は、アーティストの家庭という、凄く型破りな環境で育ちました。振り返ると私にとってのロールモデルは多分、母で。性別やジェンダーロール(性役割)にとらわれない彼女の背中を見て育ちました。だから私も、ジェンダーロにとらわれずに生きてこられました。でもそれはとても稀有な立場で、ありがたい事だったんだなと思います。私にとって女性であることは、ただ自分自身であることです。(以下省略)』
https://twitter.com/SHISEIDO_brand/status/1426347845070721024/
ここまでで約40秒。最初にこれがリリースされてればなぁとも思ったが、頑なに自分の間違いを認めない大人たちに辟易する事が多過ぎる昨今の世においてこうやって軌道修正してくれる企業は大変貴重といえる。英断と対処に拍手を贈りたい。どうもありがとう。
これを聞けば(日本語訳字幕を読めば)、ヒカルに対する誤解はあらかた解けるだろう。残念なのは、叩く材料を探して彷徨いてる人々にとってはあまり美味しい餌ではないしもう既に一度しこたま叩いている為何の旨味もなく、恐らく反応ひとつしないだろうということだ。しかし、前の不完全な日本語字幕を読んで「どうしちゃったのヒカルちゃん!?」と早合点してしまった元々は好意的な人たちには、是非目を通して欲しいものです。
これを聞いて、「ノンバイナリ」という言葉が登場してよかったなと思わされた。ヒカルがこうやって自分の名前を肯定的に捉える事をより推し進めてくれたから。
ヒカルの名前に対する思いは結構複雑だ。
@utadahikaru : 子供の頃は、名字は絶対聞き返される・間違われる、名前(光)は「ひかりちゃん」「ひかるくん」と読まれるか「かおる」と間違われる、などで傷ついたりもしたけど、今は好きです! QT @johanclown: 宇多田さん!自分の名前は好きですか?
https://twitter.com/utadahikaru/status/216883865044791297
ご覧のように、幼い頃は名前で結構苦労したみたい。英語圏でも、学校に通い始めたら机に“Hiraku Utada(ヒラク・ウタダ)”と書かれていたりしてやっぱり間違えられている。なおこの時の「私はヒラクじゃない! 私、ひらかないっ!!」っていうツッコミ、切ないテイストを混ぜながらもユーモラスで私かなり好きです。余談でした。(2006年のNHK「トップランナー」っすね)
そういう複雑な感情が、「ノンバイナリ」という概念が普及して出会えた事で、またひとつほどかれたのかと思うとね。こちとら年がら年中ヒカルヒカルと毎日連呼していて、恐らく一生のうちでいちばん思い入れの深い固有名詞になるので、それを名乗る本人が名前を気に入っていないと本気で切ないのだ。なので、「ノンバイナリ」さん、どうもありがとうなのでした。つつしんでお礼を言わせて、くださいね。