無意識日記々

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歌唱評価

歌の一般的な評価に関しては、まだまだ宇多田ヒカルの地位は揺るぎない。というか、今後恐らくずっと変わる事はないだろう。もし何かアクシデントがあって未来に声が出なくなったとしても「昔は凄かった」と誰かが言う。そして今は"当時の"映像がすぐ検索されるから、実際にそれが見られて、実際に凄いのだ。

先日のMステでも、ヒカルが出てきた時の反応は第一に「若い」「かわいい」そして「歌うめぇ」だった。ライブで不調の回に当たった人はそれに関しては酷評するだろうしそれに反論する気もないが、実際にみたきいた事のある絶対数が少ない為少数派の意見、という風な立ち位置になっている。今はもうライブでは安定した歌唱をコンスタントに聞かせられるようになったと判断してよさそうだから、この全体としての評判メカニズムはヒカルに対して前向きに作用し続けていくだろう。

マスを相手にするにあたって、この"前評判"というものの効果は非常に大きい。ハードルがあがってつらい、という見方もできなくはないが、人は案外、何の前評判もなく上手い歌を聞かされても、どちらかといえばそれを過小評価する傾向にあるものだ。保守的というか、無名である事と実力が足りない事が無意識下で何となく繋がってしまっているのだ。先入観である。

しかし、事前に歌が上手い人だという先入観を持っている聴衆に対してそれに応えるパフォーマンスができた場合は、しっかりそのまま「やっぱり歌が上手いなぁ」と評価してもらえる。予想や期待にそぐう結果が出る事は、人にとって心地良いものなのだ。

アーティスト活動休止中の現在でも、こうやってたま〜に露出があって、その度に歌の上手さがクローズアップされていればこの、「"高いハードル"を伴った先入観」は、なんとなく次の世代に継承されていく。実際に美空ひばりの歌を聴いた事がなくても美空ひばりはどうやら歌が滅茶苦茶上手いらしいという事は知っている状態が、宇多田ヒカルにも少しずつ訪れ始めているのだ。

ただ、今後ツアーを続ける季節が仮にやってくるとしたら、先入観は真実に徐々に近づいていくから注意が必要だ。尤も、ヒカルの場合その真実が先入観を上回る可能性が高いから心配ないのだけどね。