無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

天照大神、再臨

そしてEclipseの登場だ。2時間の本編の、まぁ大体中間地点で、衣装替えや、休憩や、バンドのセッティングなど舞台裏でやるべき事が多い中、舞台上では3人の鍵盤卓の魔術師たちが即興を繰り広げる。

全編はスタジオバージョンより大幅にストレッチされ、中盤にはWINGSの後半でも鳴っていたトーキング系のサンプリング音まで飛び出す。曲が長くなっているのは、上記のように時間を稼ぐ必要があった事もあるが、ヒカルのアルバムのラスト付近でお馴染みのインタールードとは大きく役割が異なる事も、またひとつにあるだろう。

アルバムでのヒカルのインタールードは、大団円のラストをこれからいよいよ迎えます、という意図で配されている。「さぁ、あと一曲で終わりだよ、深呼吸して。」というあの感じ。ならば聴き手が"一息つける"程度の長さが望ましい。イントロダクションに近い役割である。

一方、Wild LifeでのEclipseの立ち位置は中間地点。此方から訪れ、彼方へと赴く揺蕩いと微睡みと淀みの時間帯だ。ここで重要なのは、全体の流れを掴み整え誂え乗りこなす設いの時間幅である。固唾を呑んで演奏を見守り続ける事で次への展望が拓けてくるあの感じ。果たして直後には、装いを新たにしたヒカルがUtada United同様地中からせり上がってPassionを歌い始めた。前回同様蝕から日の出のように生まれ変わるモチーフを用いる事で、今度は"後半スタート"を演出したのである。

Wild Life全体としてのオープニングはGoodbye Happinessで、こちらは上空から光が舞い降りる演出となっており、下からせり上がるPassionと丁度対を形成している。イントロダクションの映像でも、宇宙から不時着して地上に降り立ったギガントが正体を表す所までいくので、それに準じた構成なのだが、日蝕もまた宇宙空間と大空を舞台としたイベントである事を鑑みれば、両者が収録されているSingle Collection Vol.2のジャケットが宇宙である事は示唆的である。

照明面でも、赤暗いトーンを主体としたEclipseから目映く白い光を射すPassionへの転換は見事であった。あらゆる面からコンセプチュアルに考え抜かれて、Eclipse&PassionはWild Lifeセットリストの"中心"に座しているのである。