無意識日記々

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「グルーヴ・リミックス」

tofubeats with BONNIE PINKの"time will tell"は「グルーヴ・リミックス」である。

このトラックはLOVE PSYCHEDELICOの"光"と並ぶ今作における「リミックス・タイプのカバートラック」のうちの一つと言っていいだろう。特にこのトラックは、原曲との主従関係がハッキリしている。

その特徴は、大胆に遅くされたテンポとそれに伴う独特のグルーヴだ。まずあの印象的なinstrumentalのメロディーを抜き出して、そのゆったりとした符割のままグルーヴをつけたらどうなるか、というのを試した意欲作だ。

アップ・テンポ/ミッド・テンポの楽曲をスロウにリアレンジした場合、多くが"バラード・ヴァージョン"と呼ばれるようになるが、この曲はそうなっていない。どんなにテンポが遅くともそこには規則正しいグルーヴがあり、脈打つように楽曲全体に張り巡らされている。

その証拠に、と言うのも違うかもしれないが、中の人は執拗に細かい音符の数々を挟み込んでくる。もしこれがベテランだったら「ほら、ここにグルーヴがあるだろう、皆まで言わせるな」とばかりにもっと隙間のある音像に仕上げそうなところを、彼の場合サービス精神旺盛というかやはりPop Musicianなのだろう、わかりやすく噛み砕いて説明する感じにトラックを仕上げている。

「テンポは遅くともグルーヴはシッカリ息づいている」点を、ここで、BONNIE PINKが外さずに押さえているのもポイントが高い。これだけテンポがゆっくりだとどうしてもシンガーはバラードのようにゆったりと歌い上げてしまいそうな所を、どの局面においても拍の強弱に気を遣って、後ろにあるグルーヴを感じ取りながら歌っている。このトラックの成立の為にはそういった歌唱が不可欠だ。彼女は見事にやり遂げたと言っていいだろう。

このトラックのコンセプトは、斯様に明快なものだから、人によっては好き嫌いが別れるかもしれない。特に、メロディー派からは「ダルい」の一言で切られてしまいそうだ。このゆったりとしたグルーヴに"のる"事が出来れば、非常に心地良い世界が待ち受けているのだが。塩分濃度の高い湖でプカプカ浮きながら日光浴をするのってきっとこんな感じなんだろうなぁ、と妄想が捗る。先入観で毛嫌いせずに、まずは彼の力作サウンドに身を委ねる所から始めたい。