無意識日記々

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二段重ねと三段重ね

とは言ってみたものの、5種類のパートのベース&ドラムスを文章で説明しようとしてもわかりにくくて退屈だな。少し毛色を変えよう。

まず、注目すべきなのは左側のスピーカーから聞こえてくるクリス・デイヴのシンバル・ワークだ。これさえ聴いていれば全体のリズム構成が掴める。のだがこれがまたややこしいフレーズ連発でだな。すんなりとは聞かせてくれない。それ即ちこの曲のリズム構成がややこしい事を示唆する。

またベースラインについては、寧ろ『恋の後も』の所で登場する例のエレクトーンフレーズを念頭に置くといい。一旦このフレーズをイメージした上で冒頭からベースラインを追っていけば、エレクトーンフレーズがあの場面で唐突に登場したのではなく、"満をじして"立ち上がってきているのがわかるだろう。符割にせよリズムパターンにせよ音階にせよ、ベースラインがしっかりと伏線として機能した挙げ句の到達点だと思って曲を聴くと全体の構成も頭に入り易い。

また、歌詞もこのベース&ドラムスのリズムパターンにある程度"縛られて"いる。特に『Others come and Go〜』から『〜いつまでもそうよ』のパートに関してはリズムに準じた符割がまず先に有って、その上で歌詞が当てはめてある。リズム先行の歌詞だから、『恋の後も』の後でまた『いつまでも いつまでも』がややメロディーを変えて登場する事ができる。ここでは前のパートのリズムパターンを継承しているからだ。

したがって、この『いつまでも いつまでも』という歌詞は意味や音韻より前に『いつま・で・も・いつま・で・も〜』というリズムの符割にまず注目して聴くべきだといえるだろう。そのリズムに乗っかった上で再びベースラインに耳を傾ければ、この、いつもの二段重ねなサビなら後半で音域を広げてくる事が得意なヒカルがあえて狭い音域でメロディーを構成した意図がみえてくる。そこさえ呑み込めてしまえばもう貴方もこの曲の生み出すグルーヴの虜です。

しかし、困った事に天才なのは、この『いつまでも』はタイトルの『Forevermore』の韻をしっかり踏んでいる(ふぉればも/いつまでも)のみならず、意味の上でもしっかり同じな点だ。言葉の意味と音韻とリズムパターンの3つがしっかり重なるフレーズを作って楽曲の核を形作っている。一体どこでどうやってここに辿り着くんだか想像もつかん。つくづくヒカルは総合音楽家だと痛感するしかないよ。