無意識日記々

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部屋の空気を変える音

ティーブ・ハリスが言うように、70年代のプログレッシブ・ロックの楽曲は鳴らした瞬間「部屋の空気が変わる」感覚がある。近年のプログレにも高水準のものは幾つかあるが、あの独特の感覚を出すタイプは少ない。案外Paradise LostOpeth、Anathemaのようなデスメタル由来のバンドの方がそういう特色を受け継いである。

これは何なのかと考えた時に、ライブの機会や客層の違いなのかなと思い至った。今のバンドは基本的に熱心なファンをメインの聴衆に想定しているが、70年代当時はパブ・ロックというか、不特定な客層を相手に演奏する機会が多かったのではないか。そういう客を相手にするには、まず聴き始めて貰わないとどうしようもないので、「出音一発で酒飲んでる客を振り向かせる」ような能力が求められた。それが冒頭の「空気が変わる」術の発展に繋がったのではないかと。「お、なんだなんだ」と酒の肴に伸ばす手を止めさせる為に、特に静の表現力で勝負したのがプログレで、動で勝負したのがハードロックだったんではないかと。


2005年2月23日のNYショウケースギグでUtaDAは生まれて初めて、かどうかはわからないが少なくとも滅多にない「無関心の観客を相手にするにパフォーマンスする」貴重な機会を得た。普段は自分が出てきただけで注目されて、寧ろ固唾を飲んで自分が何を言うか聞き耳をそばだてられている始末。その落差は大きかっただろう。

そんな中での経験が、その後のライブ・パフォーマンスのみならず、楽曲制作に対しても影響を与えた可能性は考えられないだろうか。普段のライブも(という程本数を重ねていないが)曲作りには影響を与えているだろうが、特殊だったショウケースギグの与えた影響は、いつにも増して特殊だったのではないだろうか―続きはまた次回のお楽しみで。