無意識日記々

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唐突にジャルジャルのネタを絶賛する話

リアルタイムで観れなかったので書き逃してたが、今年のM1グランプリのネタを観た。いやぁ毎年面白いねこの番組。とろサーモンも和牛も勿論面白かったが、やっぱり私がいちばん笑ったのはジャルジャルの「ピンポンパンポンピン」のネタだ。完成度という意味ではM1史上最高峰じゃないの。水も漏らさぬとんでもない構成力だったわ。結果は6位だっが、彼らは漫才の枠にとどまらずに独自の創造性を発揮していってくれればいい。実際、つまらない人には徹底的につまらないらしいし。

彼らのネタは非常に"音楽的"である。主題を提示し応用して展開させる。コードを変えテンポを変えリズムを変えて様々な変奏で彩った後に前半からの主題を再提示して帰結していくカタルシスの作り方は全く協奏曲や交響曲のそれだ。今回は第4楽章のアレグロの爆発力か。いやはや、あれを実現する練習量も凄まじいし発想の独自性にそこから可能性を突き詰めて辿り着いた完成度の高さときたら。

彼らの今回のネタは普遍性という点でも図抜けている。実際、20年後30年後にこのネタを披露しても笑いがとれる。予め知っておくべき約束ごとが「ピンポーンは呼び鈴の音」程度の事しかないのだから老若男女問わず楽しめる。時代が変わってもそういった約束ごとのマイナーチェンジを施せば幾らでもエバーグリーンなネタだろう。落語でいえば「古典」を作ったといって差し支えない。あとは本当に時代を超えてこのネタを見せてくれるコンビが現れるかだが…めっちゃ練習いや訓練しないとひとつのミスで総てがグダグダになるタイプのネタなので、あれだな、パガニーニカプリースみたいな感じか。名曲だけど、さて演奏できる人は現れますのんか、というような。


こういう他分野の作品に触れるのは刺激になるねぇ。動画はYouTubeなどに落ちているから気になる人は4分ちょい、見てみればいい。万が一笑えなくても感心は出来るから。

DESTINY 鎌倉ものがたり」も同じく「とてもよく出来た作品」だ。こちらは古典となるような強靱さには欠けるものの、レンタルビデオやテレビ放送なんかで気軽に触れたらかなりの好打率で「結構よかった」と言って貰える作品である。「丁寧に作り込んであるなぁ」と感心するような小ネタがそこかしこに潜んでいる。あんまり煽ってこれから観る人の期待値を上げすぎると「何だ、大した事ないじゃん」と言われる事請け合いなので、肩の力を抜いて楽しんできて欲しい。

こういう作品にヒカルが主題歌を提供する、というのも不思議な感じである。「Casshern」やら「エヴァンゲリオン」やら、制作者が命懸けで作っているような真剣勝負の作品にはヒカルのシリアスなトーンがマッチしていたが、こういう、「DESTINY 鎌倉ものがたり」のような「所詮はお話なんだし」という態度が透けて見える作風は正直合わないと思っていた。実写かアニメかにかかわらず。

しかしまぁ『あなた』のはまり具合はどうだ。見事なものだ。更に不思議なのは、ヒカルは別にその「所詮はお話なんだし」というアティテュードに全然乗っかっていない所だ。息子への愛を正直に誠実に歌った歌がこの茶番映画にすんなり溶け合うというのはなかなかに得難い事態だ。ヒカルは一体どこまで"見通して"たのか。本当に不思議だわ。