『あなた』のYouTube再生回数は600万回を突破、映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」は予想外の、かどうか知らないがロングランで興業収入(だっけ?)30億円を突破、とどちらも基準がよくわからないけど結構なヒットを記録した模様。関係者一同ホッと胸を撫で下ろしたかガッツポーズをしたか。まぁ取り敢えずこれだけ数字を出されると「ポシャった」なんて言う人は妬みとの謗りを免れないだろうな。
映画の方は公開当時に書いた通り、内容が「実写版ジブリ映画」とでもいうべきファンタジー色の強いもので、昨今ますますアニメ・漫画作品が主流化している日本映画(実写でも調べてみたら漫画原作だったりねぇ)の中ではある意味「手堅い」作風で、家族連れまで取り込んだ感じだったのではと勝手に推測している。後に地上波テレビ局で放送があっても10%位視聴率とれるんでないかな。
逆に、そういう作風だと思うと『あなた』の曲調が異質に思えてくるから不思議なものだ。実際は映画のエンディングにこれ以上ないハマり具合をみせ、それがみたいが為に「DESTINY 鎌倉ものがたり」の円盤を買ってしまいそうになる程なのだが、「妖怪ファンタジー絵巻」という正しい筈のキャッチコピーをつけた途端に『あなた』じゃないでしょ、となるのだ。どこらへんがマジックなのか。
『地獄の業火』とか言いつつ、そのサウンドは案外モダン。特にストリングスの使い方は「今風」というヤツで(この言い方は「流行の最先端」からちょっと落ち着いたくらいの頃にあなたしっくりくる)、Popsの王道とも言えるものでまぁ妖怪ファンタジー映画に合ってはいるのだがこの曲の場合そこにブラス/ホーン・セクションが入る。ここが肝だ。
ストリングスの手馴れ感に比べブラスの、なんともいえない「間抜けな響き」がコントラストを形作っている。これが、どこまで狙い通〜り、なのかが未だに気に掛かっている。
ヒカルのブラスの使い方は、数は少ないが「いつもこう」なのかもしれない。古くは『You Make Me Want To Be A Man』で「こんな単純なフレーズをプロに頼むのは如何なものか」とスタジオのアシスタント君に吹いて貰っていたし、最近では『荒野の狼』でのあからさまな使い方もそうだ。普段ジャズトランペッターやサキソフォニストの演奏に親しんでいる身としては「喇叭はもっとセクシーな音が出せるんだ!」と言いたくやるくらい呆気ない使い方なのだ。ストリングスはいつも色気タップリなのにねぇ。
でもその使い方のお陰で『あなた』は日本語の歌としての存在感を確立している訳でまぁ難しいバランスの上で成り立っているサウンドだなぁと感心する訳でありますよ。