Apple Musicの邦楽の品揃えは余り宜しくない。iTunes Storeでは売っているがストリーミングでは聴けないアーティスト、楽曲が幾つも見つかった。この状況で全曲ストリーミングを始めたヒカルは結構先進的なのかもしれない。
これがどう転ぶか。梶さんも随分と投入時期を見計らっていたのだろう。まぁお陰で私もトライアルする気になったのだし成功だ。あとは、そう、ヒカルがストリーミングを楽しんでいるか、だわな。
ストリーミングストリーミングと煩いが、幾らでも聴ける音があるという状況は本当に音楽が次から次へと"流れて"(stream)いる感じがする。ストリーミングの意味は、データを逐次的に送り込むって事だし、音楽が聞こえてくる状態を"音楽が流れています"と表現する事もある。しかし、何だろう、それ以上に"とどまらない"感覚が強い。止められない止まらない感じ? かっぱえびせん??
この感覚の中でリスナーを立ち止まらせるのはかなり難しい。幾らでもとっかえひっかえ出来る音楽が数千万曲あるのだからその中で気に入って貰ってしかもリピートして貰えるなんて至難の業だ。
この、"流れ"の中でヒカルの新曲にどれだけの注目が集まるのやら。序盤は大丈夫だろう。しかし、この定額配信制度がもっと広まっていくと、より即効性の強い歌が受け入れられやすくなる。もっと言えば、サウンドロゴみたいなのに収束していくんじゃないかと。それは、あんまりヒカルにとっては…嗚呼でも『COLORS』みたいな曲もあるかー。
要は、ヒカルがこの空間に慣れきった時に曲作りのニュアンスが変わっていなければ有り難い、と。2016年にヘルマン・ヘッセの作品から曲名をうただくような人なので、そこらへんは揺るぎなさそうなんだが。
何度も聴いているうちに真意が汲み取れてきて末永く愛聴できる楽曲か、それとも一発で気に入ってそこからもずっと気に入ったままの楽曲か、どちらに比重を置く事になるやら。―あぁ、ヒカルは「そのうち飽きる曲」なんて一曲も書いた事がないからそういう選択肢は最初から除外している。聴き手にどう入り込んでくるか。音楽が"流れて"いく中で引っ掛かる何かを込める方法…今まではそれがラジオだったのがストリーミングに変わる。新しいラジオの生む新しい感覚がポップソングの作詞作曲にまで還元されるようになるのはいつの事になるやら。ここ日本ではヒカルももう少しだけ待ってもよさそうだ。