毎度言ってることだが、私の場合ヒカルのアルバムで最も頻繁に通しで聴くのは『This Is The One』である。演奏時間が一番短く、ちょっとした空き時間に聴けるからだ。10曲36分。普段のフルアルバムより15~20分近く短い。
とりもなおさずこれは、曲数もさることながら1曲々々が短いからだ。3分台が大半だ。
折しも、昨今のインターナショナル・チャートでも全体的に曲が短くなっている。だからこそこの間10分越えの曲ばかり集めたTOOLのアルバムが全米1位を獲得したのが話題になったのだが、他にチャート・インしている曲は短いものばかりだ。2分台の曲もある。何だか60年代みたいだね。
よい傾向だと思う。ポップ・ソングは聴かれてなんぼ。短い曲の方が再生し易い。10分休憩が取れたとして、5分の曲なら2曲しか聴けないが3分の曲なら3曲聴ける。何だかお得感がある。
とはいえ、宇多田ヒカル名義の曲ではまだまだ曲が短くなっているとはいえない。アルバム『初恋』は12曲で約54分。1曲あたり4分半である。
ただ、ちょいとばかし兆候はみえる。『パクチーの歌』と『残り香』が3分台。『Fantome』でも『道』と『人生最高の日』が3分台だったし、少しずつではあるがコンパクトなポップ・ソングの手法が垣間見えている。注目すべきなのは、今挙げた4曲総てが全く曲調が異なることだ。アップテンポでキャッチーな『道』とエモーショナルでスタイリッシュな『残り香』では全く違う。曲が短くなるからといってバリエーションが薄れるという懸念はヒカルには当て嵌まらないだろう。
勿論、『俺の彼女』や『桜流し』のような凝った曲展開も私は大好きだ。というか普段の主食はこっちなんだよ。プログレジャズメタルとかだからね。でもヒカルはポップ・ミュージシャンなのだ。今のポップスにアジャストしてみるのも一つの方法で、その目安として演奏時間というのはわかりやすいだろう。ヒカルの次の新曲が何分なのか、そこを確認してヒカルのポップ・ミュージシャンとしての意識を探ってみるのもいいかもしれないね。