あんまりにも宇多田ヒカルテイストだらけで(“歌詞の聞き取りづらさ”も含めて)総てがすんなり入ってくる『Time』で唯一素直に飲み込めない要素がある。このタイトルよ。なんで『Time』?
歌詞カード無しで歌詞の話をするのはリスキーだが、今のところタイトルに関係ある歌詞は『時を戻す』の一節だけだ。
これは全く予想出来ていなかった。サウンドの方向性の時を戻してる事も指しているのだろうが、そもそもここまでいろんな要素をプレイバックしまくりだとは思ってなかったもんで。それでタイトルを『Time』にしてしまうのは、ほんとちょっと待って。タイムとりたいわ。
これだと本当に、ドラマの中で「悪くない」が決め台詞(主人公の発する最高の褒め言葉)として登場するからぺこぱ的に時も戻しておこうかなとヒカルが悪戯っぽく仕込んだという説が現実味を帯びてくる。時を戻そう、じゃあタイトル『Time』でいいじゃん、と。
ヒカルがぺこぱのファンだという話は出てはいないが、彼らの漫才を観たら気に入る事はほぼ間違いない。フレーズの最後で価値転換して受け手の意表を突くのが大好きだからねヒカルさん。ぺこぱの漫才は宇多田ヒカル作詞の芸風と共通しているのだ。
代表的な例が御存知『Give Me A Reason』で、曲中散々タイトルコールして「理由をくれ」とせがみ続けた挙句最後の最後で『ほんとはワケなんていらない』と卓袱台をひっくり返して曲を終える。もっとミニマルな例だと『Movin' on without you』だよね。デモ版では『ガラスのハイヒール見つけないでね』になっていた所を完成稿では『ガラスのハイヒール見つけ“てもダメ”』に変えていた。わずか4文字で意表を突くこの展開よ。
ヒカルは「肯定かと思いきや否定」でぺこぱは「否定かと思いきや肯定かと」と違いはあるが、価値転換のタイミングの取り方は結構似ている。呼び戻し的なあの感じな。そんなだから明智五郎の「悪くない」を原作で読んで「ぺこぱかよ!」とツッコンでじゃあ「時を戻そう」を歌詞に入れちゃうかと考えても不思議ではない。
……いや結構真面目に言ってるからねっ俺!?(笑)
だって、『笑わせる』って歌詞も出てくるんだもんなぁ。前のツアー名は『Laughter In The Dark Tour 2018』だったし又吉直樹呼んだし、このところそこかしこで「笑い」に繋がる仕込みがあるのはこれ自然な流れなんだと思ってるんだけど。「マツコの知らない世界」知ってるくらいだからM-1グランプリとか観てても可笑しくないよね…。
なんてことを言いたくなってしまうのも、『Time』のサウンドがあざといまでに狙った音作りだからだ。こんなの作るからには、なんか切っ掛けなり何なりあったんじゃないかと。そこらへんのところをツッコンでいかないといけないんだけど、嗚呼、『美食探偵 明智五郎』第1話って1週間GYAO!で無料配信されるの? もっとドラマとの関わり方についても触れとかないとねー。もうみんな新曲に夢中になっちゃって用済み感出し始めてるからな。まーそういうの全部引っ括めて流れで参りましょう。