全然関係ない話なんだけど、ファッションブランドZARAがガザを連想させる写真をリリースして炎上したというニュースを読んで溜息を吐いてしまった。見たところ「濡れ衣キャンセルカルチャーの餌食がまたひとつ」な模様だが、何が言いたいかといえば、表現者というのは最低限の国際ニュースはチェックしておかないと、どこで何が飛び火してくるかわからないから日頃から注意が必要だねという話。
予め対処した例としては、日本の漫画作品「東京卍リベンジャーズ」なんかが思い起こされる。ご覧の通り作品名の真ん中に卍(まんじ)の字が入るデザインだがこれはドイツではハーケンクロイツと酷似していると見做され公には使えない。実際、漫画以上に国際展開が為されているアニメの方ではタイトルから卍がハズされて「東京リベンジャーズ」となっている(それが理由かは知らないが)。デリケートな問題ではこういった対処が必要なケースが出てくるのだ。
ヒカルパイセンに関していえば、国際問題への関心が平時より高く、そういった問題で炎上する可能性はそう高くはない。だが、全国ツアー・世界ツアー規模のプロジェクトとなってくるとそのアウトプットはとても独力で取り仕切れるものではない為、組織的なコンプラ対策が求められるだろう。特に、ヒカルが普段やや受け身になりがちなヴィジュアル面でのチェックは厳重に行って貰いたいところ。
機械翻訳が普及したからこその言語間のトラブルも勿論気掛かりだが画像一枚の威力にはとても敵わない。TEXTよりJPGの方が文字通り桁違いに影響力が強い。画像と映像で誤った印象が流布しないような対策が求められる。
来年の宇多田ヒカル25周年のコンセプトは『SCIENCE FICTION』である。20世紀に於けるサイエンス・フィクション~科学による虚構とはおおまかに「空想科学小説」を指し娯楽性の高いコンテンツだったのだが、21世紀に於ける科学虚構とは、寧ろ現実を侵食する虚構かどうかわからない虚構のことを指すつもりなのではないか、と目下こちらは空想中だ。「発達した科学は魔法と区別がつかない」とはよく言われるが、「科学の発達が現実と虚構の間(あわい)を曖昧にしていく」のが、現代の肌感覚になるかもしれない。今回のヒカルの『SCIENCE FICTION』がそういったコンセプトかどうかはまだわからないが、仮にそういった領域に踏み込むのなら、ガッチガチのコンプライアンスで守ってあげて欲しいなと切に願うのでありました。日本全国ツアーの後に海外ツアーが控えているのなら特に、ね。