今回のインタビューでも話題の中心に居る『Kiss & Cry』は、前回6年前『Laughter In The Dark Tour 2018』に引き続いてのライブ披露であったが、何より『Keep Tryin'』と並んで歌われたのが胸熱だったわね。
既述の通り『Keep Tryin'』と『Kiss & Cry』はきょうだい曲みたいなもので非常に似通っていて…って書こうとして「いや待てよ」と気がついた。既述っつっても17年前の日記やんね、流石に昔過ぎる…ということで、キプトラとキスクラについておさらいしとこっか。
今書いた曲の略称からもわかるとおり、まずタイトルからして韻を踏んでいる。"K...ry..."だね。そして曲内容も、当時チャートを席巻していた「応援歌」スタイルの楽曲に対する宇多田ヒカルの返答みたいなコンセプトが共通している。
ヒカルの歌詞といえば『君と僕の間に』やら『私の心の中にあなたがいる』のように、一人称と二人称の物語が大半を占めるのだが、このキプトラ・キスクラの2曲は家族勢揃いな所が珍しく、そして共通しているのだ。
『お父さん keep trying, trying
お母さん keep trying, trying
お兄ちゃん、車掌さん、お嫁さん keep trying, trying 』
『お父さんのリストラと
お兄ちゃんのインターネット
(娘さんのリストカット)
お母さんはダイエット ダイエット ダイエット』
という風に。tryingとダイエットが最後に繰り返される所も似てるね。
一方で、『Keep Tryin'』が『挑戦者のみ貰えるご褒美欲しいの』と、頑張る過程に着目して歌われているのに対して、『Kiss & Cry』は『うまくいかなくたってまぁいいんじゃない』と頑張った結果について言及している点は、“対になっている”と解釈して差し支えないだろう。もともと「キス&クライ」が「フィギュアスケートで競技を終えた後に採点結果を待つ時間・空間」を意味してるのだから当然と言えば当然なのだが。
んで。
ここで聡い人は気づいたかもしれないが、『SCIENCE FICTION TOUR 2024』では、ちゃんとこの「原因」→「結果」の順に、即ち『Keep Tryin'』から『Kiss & Cry』の順に歌われているのだ。更にこの連続する2曲に引き続いてMCなしで歌われるのが、
『誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ』
『みんなの願いは同時には叶わない』
という歌詞を携えた『誰かの願いが叶うころ』なのである。
『Keep Tryin'』で頑張って、『Kiss & Cry』で結果待ちして、『誰かの願いが叶うころ』でみんなが出た結果に対して悲喜交々それぞれの感情を抱くという、そんな流れのセットリストでSF公演は前半を終える構成になっていたわけなのである。Spotifyクロニクルでヒカルが答えていたように、セットリストの仕掛け人は主に三宅さんらしいのだけど、こういった所まで考えてくれてるのは頼もしいの一言に尽きるわね。有り難いわ。