無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

補足ェ…

前回のエントリーで書き漏らしたポイントがあったので補足。

前に、キプトラの最後のパートで"つ"の音が節ごとに位置を変えて出現している点に触れた。ここには、同様の手法がもうひとつ援用されている。子音[d]である。

一行目、
『しょうねんは いつまでも』
のパートでは10音のうち9音目に"で[de]"の音が来ている。

次の2行目、
『いつまでも かたおもい』
には、"いつまでも"が繰り返されている為当然4音目に"で[de]"もあるのだが、メロディーの強弱の位置からすればこの循環押韻を担っているのは7音目、『か"た"おもい』の"た[ta]"の方だろう。[t]と[d]は有声無声の関係、即ち濁音の関係にあり子音としてとても近い為頻繁に韻を踏み合う。

3行目、
『じょうねつに じょうねつに』
はメロディーが異なるので[d]の子音を受ける節はない例の"つ"は[ts]と発音されるので系統が異なる。この[d]の系列と[ts]の系列が二重螺旋のように絡み合いながら最後の『お父さん Keep tryin', tryin'』の[t]に結び付いているといった方がいいか。

そして4行目、
『おねだんつ けられない』
に至って[d]の音は3音目の"だ[da]"に至る。

9音目、7音目(と4音目)、そして3音目と前に前に韻が遷移してきて辿り着く先は直後のメロディー、
『おとうさん keep tryin', tryin'』
の2音目"と[to]"である。子音としては、"で[de]"、"た[ta]"、"だ[da]"、"と[to]"という風に、綺麗に[d],[t],[d],[t],の順に並んでいる。

件のように、『おとうさん』は『しょうねん』からも韻を受け継いでいる。これだけ複雑な仕掛けの多重音韻を形に出来るとは驚嘆の溜め息を吐く事すら忘れ息を呑むしかない。全く以てとんでもない作詞スキルなのである宇多田ヒカルは。