無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

"Number One for Only One,You."

昨日【音楽のプロ200人が選ぶ本当に歌が上手い歌手ランキング】というリツイートが回ってきた。へぇ、プロの耳からはそう聞こえるのか、と素人は解釈してしまいそうだがこれを参考にするのはマズい。多分相当サンプルが偏っている。ヒカルは6位だったが、だったら上の5人に直接訊いてみればいい。「貴方は自分が宇多田ヒカルより歌が上手いと思いますか?」と。恐らく全員がこう答えるだろう。「自分の持ち歌ならばね」。そういう限定的な局面にならない限り、ヒカルより歌が上手いなんてのは大体にして有り得ない。

このランキングの対象歌手が、まずよくわからない。クラシックの声楽家ん外している、とかならまだいい。有名人で大衆的な歌手という基準なのだろうか。だとしたら美空ひばり石川さゆり天童よしみが入っていないのはおかしい。いや、演歌歌手は除外します、というのであっても、それでも美空ひばりが入っていないのはおかしい。プロの音楽家が聴いて呆れる。何故なら、美空は演歌を歌ったら誰よりも上手かったのみならず、Pops全般に対する総合能力でもNo.1だからだ。およそ、こういうランキングに名前が出ないなんて有り得ない。それとも、「実際に生で聴いた事のある人の中で」みたいな縛りでもあったのかな。

美空ひばりの歌うジャズやソウル、ブルーズを聴けばこちらが言わんとしている事は伝わるだろう。演歌歌手としてのみならずPops歌手としてもNo.1だという事を。

ヒカルも勿論いいセン行ってるのだが、如何せん踏んだ場数が違いすぎる。それを圧倒的な"歌への理解力"で埋めて高みに昇るのがヒカルの真骨頂だが、それでもひばりには届かない。ただ、アンタッチャブルだとは思わない。今後のヒカルの成長の方向性によっては同じくレジェンドとして数えられるようにはなるだろう。

もう1人、肝心な名前がない。桑田佳祐だ。この40年鬼のようにあらゆる方向性からものまねされまくってきた"超個性的な喉と歌唱法の持ち主"として認知されてきた為、そのプレーンな歌唱力を評価される機会が無いままここまで来てしまったが(本人もきっとそういうのは嫌なんだろう)、その技術力は相当なものだ。特に、2〜3時間のコンサートを数ヶ月にわたってこなす為のノウハウが注ぎ込まれている点においては他の追随を許さないだろう。あんな歌い方が成立するなんてまさに綱渡りなのだが、テレビで観たらちゃんとその綱を渡っている。おちゃらけたキャラクターからは想像もつかない信じられない集中力だ。なお、私は彼の歌声をナマで聴いたことがないのであしからず。(ここずっこけるとこね)

ヒカルには、やっぱりそこが足りていない。一晩なら一晩全体でベストな出来を、ツアーが3ヶ月なら3ヶ月全体で最善の結果を出せるように歌える、という技術がまだ足りていない。In The FleshやWILD LIFEを観る限り、一晩の中でのペース配分は素晴らしく上手くなったと思えるが、ツアー全体で、となると疑問が残る。しかしウタユナの時のようないつステージで倒れてもおかしくないあの向こう見ずさを思えば、とんでもなく成長したものだ。あんな無茶は若い時にしか出来ないのだからこれはこれでよかった。ヒカルは賭けに勝ったのだ。

という訳で、美空ひばり桑田佳祐も居ないランキングじゃあ意味がない。偶然にも(?)2人とも日本一と呼べるステイタスを築き上げているので私がこんなランキングに対してフォローを入れるつもりもないのだが、この2人が上に居るのならヒカルが1位でなくても納得出来たのに、という意味合いもあってこんなエントリーを書かせてうただいた。なお、「歌の上手さ」なんて聴き手一人々々が納得するかどうかがまず第一なので、それぞれのNo.1をまず讃える事を忘れずに。"Number One for Only One, You."だわな。