無意識日記々

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実は一人負け

色々と音楽市場の様子を見てみると、結局、衰退したのは日本のJpop市場だけで、他は大して変わっていないのではないか。

インターネットの普及でCDは売れなくなったが、欧米の市場でいえばそれは、まるごとではないものの購入方法が配信に移行しただけで、収益性に問題があるとはいえ、ニーズ自体が衰えているようには思えない。日本の市場に関しても、各ジャンルの来日公演をみるに特に勢いが衰えている気配はない。ここ15年のトレンドであるフェスティバルの隆盛も、今後は兎も角、今のところ絶好調である。

興行に関していえば、Jpopの巨人たちだって全く心配が無い。平気でドーム公演を満員にしている。また、アイドル文化に関しては男女とも今が絶頂期だろう。してみると、実は、販売方法やその収益性は置いておいて、ニーズ自体が減ったのは日本の商業音楽市場の中心、かつてJpopと呼ばれた「不特定多数を相手にした商業音楽」のみなのではないか、という気がしてきた。もっと踏み込んでいえば、テレビを利用して売る曲が減ったというだけなのではないかと。

テレビに関していえば、昔に較べて随分視聴率が低下している。今連続ドラマが20%を超えたら大変な話題であるが、90年代なんかは枠によっては20%台がノルマだとすら言われていた。そりゃあ、見劣りする。

数字が実態をどれだけ反映してるかはわからない。録画で見る層が何%位居るかとかのリサーチも必要だろう。しかし、テレビ離れ自体は抗えない流れのようであり、それに伴ってマスメディア頼りの売り方をしてきたミュージシャン、というよりレコード会社だわな、は軒並み苦労している。逆にいえばそれ以外は大して変わっていない。興行の強いミュージシャンからしてみれば、「それで?」てなもんだ。

そんな中で宇多田ヒカルは特に異質である。マスメディアの扱いが大きな影響を及ぼすポジションに居ながら、媚びる様子が全く無い。こちらからアピールする事も無く、ずっとオファーを選別する立場だった。まぁそれはいい。

問題なのは、アーティストのキャラクターとしては、本来ならば興行に強いタイプだったんじゃないかという点だ。いや、現実には本人が制作重視で、ライブ活動の経験自体が不足していたからそうでもなかったのだが、(繰り返しになるが)"キャラクターとしては"、知名度とか話題性だとかルックスだとかは無縁の、マイク一本で、その歌唱力ひとつで観客を黙らせるようなタイプの、"超実力派ミュージシャン"だった筈だ。それが現状"こうなって"いるのは、経緯次第とはいえ、些か居心地の悪さを感じる。

だから、次のプロモーション戦略は難しいのだ。ぽっかりと空洞化した日本の商業音楽の中心市場に、メディアとして老いた地上波テレビと共にまた挑むか、それとも、今後は現場主義、興行主体のミュージシャンになっていくか。ヒカルが大きく生き方を変える事はないだろうから制作重視は変わらないだろうが、プロモーション戦略の方は時代とやらに合わせて変化させていかずにはいられないだろう。私自身も書いててこの話題に興味があるんだかないんだかわかりないのだけれど、ファンベースの薄さを逆に身軽さと捉えて、ドラスティックに進んでいって欲しいものである。…それも違うのかな〜よくわからないぜ。