無意識日記々

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WINGS in ULTRA BLUE

あらゆるファイルがオシシ仮面かオカメ仮面。(独り言)


幾ら歌詞だからといって、その歌詞はその歌の中の物語でしかないといっても、やっぱり私生活を題材にした歌は、その頃のフィーリングから離れてしまった"今"に聴くなり歌うなりした時に、その自分のパーソナルな感情がどうしたって甦ってきてしまい、結果感情移入が阻害されるような事になりはしないか。

WINGSで何度も歌われる『あなただけが私の親友』とは、結局一体どういった意味だったのだろう。今述べた通り、歌はその中に独自の物語を持ち、従って如何に現実のエピソードをベースにしていようとそれを一旦フィクションとして捉えるのは、そうだな、いわば礼儀作法だ。だからこの歌の主人公の"あなた"は、本当に彼女にとって唯一無二の親友なのだろう。

2つの事実に挟まれている。ヒカルが、この歌は当時のパートナーとの喧嘩が題材になっていると明言していること。同じアルバムに、本物の親友に捧げた歌"Making Love"が収録されている事だ。

後者の方は、いきなり先程の礼儀作法をぶち壊す。いやそれは別に珍しい事じゃない。実在する人間が実在する人間に対して実在する感情を伝えている。これは流石にフィクションと呼ぶのを憚らせる。呼んでもいいが、それで何がどう変わるという事もない。

そして前者をどう扱うか。確かに、当時夫に対して親友のような感覚がある、とは言っている。しかし、だからって"あなただけ"ってこたぁない。Making Loveが非フィクション(うわ発音難しそう)である事を認めたならば、認めざるを得ないのならば、WINGSはフィクションだろう。現実を題材にしつつ、架空の設定、架空の登場人物の言葉が並んでいるのだ。

に、しては。ヒカルの歌が生々しい。どの言葉も光の本音としか、素の本音としか思えない言葉が並ぶ。実際に暖かい場所で大好きな作家の本を開いたのだろうと誰しもが思う。いや、そう思わせるしかないほどに正直な歌詞、歌である。じゃあこの"あなただけ"っていうのは、誰に対する、何の本音なのだろう。

今私は、正直な、と書いた。一方で歌詞には『素直な言葉はまだおあずけ』とある。少し何か、嘘はつかないまでも気持ちを上乗せした言葉がこの中に紛れ込んでいるのだろうか。

実際には、本当に素直過ぎる歌詞が並んでいる。“あなただけ”の一節だけが、アルバムという空間の中では、うまい具合に整合性がとれないのだ。或いは、『あなただけが私の親友』と呟いているのは、歌の主人公とは別の人物、例えば喧嘩した相手の方だったりするのだろうか…

…今のところうまく嵌る答は見つかっていないが、WINGSはとてもよく聴く曲なので、また何か思いついたらここに記す事にしよう。今日は早めに寝れるかな。