無意識日記々

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『私の親友』たち

『WINGS』でずっと引っ掛かってた一節があって。

『(あなただけが私の親友)』

ここね。当時ヒカル自身がインタビューで「夫というのは恋人でもありいちばんの親友でもあり」みたいな事を言っていたから、きっとこの『WINGS』という歌自体、夫婦喧嘩に端を発した歌なんだろうなと思っていた所があり。ならばここでの親友というのも歌詞の最後に出てくる『あなた』の事なんだろうなと解釈していた。その前の『You Make Me Want To Be A Man』も、夫婦喧嘩の歌っぽかったしな。

でも、他の人の考察を読んで「それだけじゃないのでは」と思い直したのよ。親友ってもっと幅広いというか、解釈の自由度が高いのではと。例えば、

『大好きな作家の本を開いて

 (あなただけが私の親友)』

という一節は、先入観を脇に置いて素直に読めば作家の本を親友だと思ってるとも取れるのだ。あるよね、ひとりぼっちで寂しい時に寄り添ってくれるような素敵な本が。それのことを親友と読んでも、本好きには違和感がないのだ、と言って伝わるかな。『エンディングの少し手前で閉じないで』に共感してくれる人なら伝わってくれるかもしれない。

一方で

『大好きな人を疑うのはなぜ

 (あなただけが私の親友)』

の一節は、冒頭に述べた通り、好きな人/パートナーの事を指しているとも解釈できる。つまり、『WINGS』という歌での『私の親友』とはかなり多義的な語句なのではないかと。

そうすると、解釈が難しいのはその前の二つだ。

『大きいばっかりで飛べない羽

 (あなただけが私の親友)』

『簡単に慣れてしまうのはなぜ

 (あなただけが私の親友)』

この二つのうち最初の方なのだが、更にその前、歌の冒頭で『じっと背中を見つめ 抱きしめようか考える』の場面、もともとここは歌の最後に出てくる『あなた』の背中なのだと私は解釈していたのだけれど、もしかしたら“羽の生えている背中”の事なのかもわからない。つまり、自分で自身の背中に立って眺めているような感覚とでもいえばいいかな。もしそうだと解釈するとここでの『私の親友』は私自身ということになる。なかなかに寂しい心持ちを描いた一節になるね。でも、そう解釈しても結構ハマるんよさ。

で、最後に残った『簡単になれてしまうはなぜ』の後の『私の親友』については……うん、わかりません! 15年前の歌にここまで悩まされるのは至上の幸福だぜ。