『WINGS』って曲は、臆病なまま終わるのよね。そこが好き。
『向かい風がチャンスだよ 今飛べ』っつってんのに
『明日に備え出来ることもあるけど
早めに寝るよ、今日は』
って歌う。飛ばずに寝んのかいな。
この何もしなさ。他の威勢のいい歌の数々とはえらい違い。
『This Is Love』では
『私からそっと抱いてみたの』
って積極的なのに『WINGS』では
『じっと背中を見つめ
抱きしめようか考える
大胆なことは想像するだけ』。
そう、何もしない。思うだけ。
『Show Me Love』では
『実際夢ばかり見ていたと気づいた時
初めて自力で一歩踏み出す』
と大変勇ましいのに『WINGS』では
『素直な言葉はまたおあずけ』
『あなたの前で言いたいことを紙に書いて
夢見てるよ大空』
という風に、言わないし、夢を見たままで一歩も踏み出せない。
だが、やっぱりそれがいい。疲れ切っている時に、もうひと頑張りエネルギーを注入してくれる歌も勿論素晴らしいが、こうやって何もしない事を肯定や否定すらしない歌というのは心に心底沁み渡る。何もしないですと言うだけ、書くだけのこの歌っぷりが、なんだろう、本当にひと息つけるのよね。心から安らげるのだ。甘さすら中途半端だから。
この歌は、翼を羽ばたかせる歌ではなくて、翼を休ませる歌。翼を歌詞にした歌でこういうのはかなり珍しいのでないかな。でも、多分、人生で経験を積めば積むほど、この歌はじんわりやんわりと効いてくる。昔より更にもっと好きになっているものね、私。