無意識日記々

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動画配信元年っぽい感じの2015年

今年のトレンドとやらとして音楽のストリーミング・サービスのスタートが取り上げられていた気がするが、実際に市場を変え始めたのは動画配信の方だった。定額見放題がかなりの低価格で提供され始めたのだ。

動画は強い。観る習慣と聴く習慣では遥かに観る習慣の方が強いからだ。普段の生活でテレビを観る割合とラジオを聴く割合を比較すれば明らかだろう。

そこに目をつけて大成功したのがアメリカのMTVだった。80年代以降メジャー・レーベルのビッグ・アクトは必ずミュージック・ビデオを作る事になる。

ここで奇妙だったのは、そうやって映像を打ち出して興味を惹いておきながら売りつけるのは音だけのレコードだったという事だ。勿論映像ソフトの単価が非常に高額だったという時代背景が効いているのだが、ミュージックビデオをPV(プロモーション・ビデオ/宣材映像)と呼ぶのは、そういった経緯があったからだ。ミュージックビデオは伝統的にレコードを売る為の宣伝材料に過ぎなかった。

時を経て今や動画は音楽よりも安くなった。動画といっても必ず音声もついてくるのだから単独では音声のみのソフトより魅力的に決まっている。音楽ソフトの利便性は今やタグによるファイルの管理のしやすさ位しかない。

となると、ミュージックビデオは今後どういう立ち位置を取ればいいのだろう。ここが結構難しいところで、ミュージックビデオの配信販売自体は長らく行われているが、如何せん基本的に宣伝材料なもんだからオフィシャルのYouTubeでタダで観れるようになっている。フルサイズでない事が多いが。いつでもタダで観れるものにわざわざペイして、とはなりにくい。値段云々の前にそういう習慣が無い。

しかし、動画配信が普及してくれば、単品販売であれ定額見放題のラインナップのひとつであれ、ミュージックビデオもまた客を引っ張ってくるコンテンツのひとつになりえる。

ここらへんは、システムや価格というより習慣や意識の問題だ。普段地上波テレビで動画ソフトをタダで観れる環境にある人にどうやって手を出してもらうか。動画配信の人気が出始めたのは、つまり、テレビより格段に便利になったからだ。ソフトの充実と管理の利便性だ。

わざわざ録画しておかなくてもいつでもあとからワンクール分のドラマなりアニメなりのチェックが出来るとか関連ソフトのレコメンド、SNSとの連携、視聴履歴管理など、ただテレビを観ているよりずっと充実した視聴が見込める。その特質が浸透してきた事による動画配信の人気だと思われる。(その浸透のきっかけは低価格化だったではあったろうけれど)

そんな中でミュージックビデオが動画配信に参入するとすれば(せずに今まで通り無料の宣伝材料に徹するという方向性も勿論考えられる)、単品のソフトとしての品質はもとより、如何に体系的に提供出来るかが重要になるだろう。

例えば、ヒカルの場合だとGoodbye HappinessのPVを観たらAutomaticとtravelingのビデオを勧められる、みたいなレコメンドをどれだけ充実させられるか、だ。正直、4〜5分の映像だけを観て満足出来る人は少ない。2本3本と畳み掛けて満足感を上げる工夫が必要だ。

今まで動画配信はその点で無料のYouTubeに負けていた。10年の蓄積は恐ろしい。YouTubeサーフィンを始めていたらいつの間にか数時間経っていた、という経験は誰にもある筈だ。極端な話、それをただ動画配信サイトに移動させるだけでよいのである。そこでYouTubeには無いオフィシャルならではの強みを出せていけば、ミュージックビデオも動画配信の目玉になっていく可能性がある。