無意識日記々

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Single Selection is this Vol.1

年度末で思い出すのはやっぱり「Single Collection Vol.1」、通称「宇多田ヒカルの"思春期"」だ。12年前、もう干支を一回りしたのか、水曜日だったとはいえギリギリのリリースで随分とあからさまだなぁと思ったが、結局年間最高売上アルバムとなった。半年後の「EXODUS」と合わせて、納税額からいえばHikaruが最も稼いだ年である。

ヒカルのバックカタログで群を抜いて売れているのがこのアルバムで、私も流石につい昨年の某新古書店年間売上第1位がシンコレ1だと聞いて「そ、そこまで!?」と吃驚した覚えがある。ヒカルがメディアに取り上げられる度にiTunes Storeで真っ先にチャートを駆け上がるのもこの作品で、今となっては「First Love」アルバム以上にヒカルの"顔"となった作品だ。そして、Vol.2と同様に、ジャケットがヒカルの顔じゃない。

アーティスト側の心境としては複雑かもしれないが、先述の新古書店売上からもわかる通り、「いちばん売れた人のいちばんのベストアルバム」という認識で買われている。DISTANCEもDeep Riverも入っていなくてベストアルバムって、なんていう不服は吹いて消し飛ぶ。極論すれば、日本人にとって「アルバムを買ってみよう」「CDを買ってみよう」となった時に一番目の選択肢となりえる作品だという事だ。歴代で、な。そういう意味では日本で最も重要なアルバムかもしれない。フィジカルかレンタルか配信かという区別をなくせば、所持数はFirst Loveアルバムとどちらが上か、なんて話すら考えたくなってくる。スケールの大きな話だなーもー。

今や売れるものは組織的なバックアップを強固にしたものばかり。秋元康、ジャニーズ、EXILEの中の人(誰だっけ)等々。個人事務所のたった1人のシンガー・ソングライターが存在感を発揮できる時代ではない。単純に、露出が継続できないのだ。来週からヒカルが復帰したからといっても、そこまでアウトプットが増える訳ではない。裏方が本業とすらいえる人にどこまで日向の仕事をこなせるか。限度ってものがある。

でも、こんな「一番最初に手に取るアルバム」を一枚でも作ってしまった人への期待というのは、大きい。ジレンマというと違うのだが、集団でないからこその選択肢の低減即ち選択コストの大幅な減少のメリットを前面に押し出すのが逆説的な時代への返答かもしれない。「これさえ買っときゃいい。」、そう言われる仕事を、我々皆が待っている。