同じフレーズを続けて2回繰り返す。新曲2曲に共通する特徴である。
『花束を君に』では『愛しい人 愛しい人』、『言いたいこと 言いたいこと』。『真夏の通り雨』では、『溢れて 溢れて』。
際立っているのは、それがサビのリフレインではない事だ。例えば、『traveling』ではサビのメロディーひとまとまりにつきタイトルコールが2回入るが、それとはちょっと違う。
少し近いのは『Show Me Love ( Not A Dream )』のサビで、『内なるパッセージ』というフレーズが2回繰り返される。これは、『traveling』のリフレインとは違い、この一言を強調する為に敢えて2回繰り返している。「大事な事なので2回言いました」感が強い。もっと言えば、サビのリフレインは音感とリズムの為に繰り返されるが、これは言葉の意味を強調したいが為に2回言っている。
これが『桜流し』になると更に顕著になる。『まだ何も伝えてない まだ何も伝えてない』だ。言葉は繰り返しだが、メロディーは符割りも音程も違う。強調を飛び越して印象倍増という感じがする。一言、強烈だ。
『愛しい人』『言いたいこと』『溢れて』も、この桜流しの『まだ何も伝えてない』の系譜である。言葉は同じだが、2回目はメロディーを少し変えてくる。更に、歌い方まで変えてくる。『愛しい人』は『花束を君に』に都合4回出てくるが、総て歌い方が違っている。その歌い分け方の解説は又の機会に譲るとして。『言いたいこと』の2回も『溢れて』の2回も、それはそれは格別の繰り返し方である。
2回続けて、というのが重要なのだ。3回じゃダメ。
サビのリフレインの音感とリズム、更にこの「大事な事なので2回言いました」による言葉の意味の強調の両方を掛け合わせたのが『SAKURAドロップス』と『真夏の通り雨』各々のエンディングである。
『好きで好きでどうしようもない
それとこれとは関係ない』
『ずっと止まない止まない雨に
ずっと癒えない癒えない渇き』
『好きで』を2回繰り返して『それと』『これと』はほんのちょっと崩す。その全体を無限ループのリズムに組み込むのが『SAKURAドロップス』だ。
『止まない』を2回、『癒えない』を2回それぞれ繰り返して、その全体を無限ループのリズムに組み込むのが『真夏の通り雨』だが、この2つの冒頭を同じ『ずっと』で括る事で『ずっと』の2回強調も繰り入れられていて、これは『SAKURAドロップス』の強化版と言えるだろう。完全な上位互換と言ってしまいたい。
同じ繰り返すのでも、このように少しずつ異なる意図と技法が託されている。それらに注意してもう一度今回出てきた曲たちを聴き直してみるといつもと少し違って聞こえてくるかもしれないよ。