無意識日記々

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頑張れ #とと姉ちゃんと妹たち

とと姉ちゃんの脚本が雑に感じるのは、登場人物の心理描写が不足しているのが一因だ。脚本家の頭の中には、このキャラがこういう台詞を言うのはこういう心情からで、という枠組みがしっかり出来ているのにそれを劇中で表現しない。視聴者の方は「恐らくそういう事だろう」と受け止めつつも、確証が無いからいちいち解釈に不安が残る。単館上映で観るB級フランス映画じゃなくながら観視聴の朝ドラなんだから全部ちゃんと喋らせた方がいい。橋田壽賀子の凄い所はそこで、これでもかと感情の解説を登場人物にさせる。日常生活なら尺の都合で言えない事をドラマの中でなら言い切ってくれる。そのカタルシスで半世紀やってきたのだ。そういう意味では橋田作品は総てファンタジーで、日常生活で表現できない欲求を表現してくれるという点では異世界に転生して異能を発揮する主人公に感情移入するライトノベル作品と何ら変わらない。水戸黄門とかもそうだよね。ちゃんとありえない異世界に転送する分、現実と妄想の区別がついていて今の若い子の方がずっと健全であると
もいえる。実写ドラマ観てる層は大抵現実と虚構の区別がつk(ry


今週のとと姉ちゃんも、常子の「家訓にこだわる理由」を反芻する場面が無いから視聴者は彼女に感情移入できない。ととがログアウトして何週経ってると思ってんねん。美子の方も、実際は、5歳の頃から局面々々で何かとひとりぼっちだった場面が伏線として効いてくる週なのに(だから"今更あなたのためと言われても"と反発する声にも力が入るのだが)、それを復習する事をしない。そういう過程を視聴者が味わい直した挙げ句の姉妹喧嘩なら「両方の気持ちがわかるだけに、喧嘩になって切ない。仲直りしてほしい。」という感情が生まれるから、後に仲直りできた時に自分の事のように嬉しくなれるのだ。そこらへんをすっ飛ばすもんだから「両方とも相手への気遣いが足りてないだけじゃん。」と突き放して観てしまい、仲直りした場合でも「このくだり要った?」と言われてしまう。バックストーリーはちゃんと出来ているだけに、詰めの甘さが何とも惜しい。

今は今週の話を例にとったが、10週間大体こんな感じである。少々不自然でも尺詰まりになっても、橋田作品までとは言わないが、もう一言説明くさいセリフやナレーションがあれば、ぐっと評判がよくなるだろう。今更こんな所で言っても手遅れだけどな。

今週から鞠子が大学生ファッションになりますます主役オーラが出てきた。タイプとしては、オールドスクール原節子タイプで、最近の女優さんにみないタイプだな。画面に出るだけで常子を食ってしまう。いやはや、いいのか。更に美子役の子も実に瑞々しくてインパクトがある。美少女タイプではないから売れないだろうが、芝居と発声のしっかりした、癖の少ない正統派だ。これも芸達者な常子役とは一味違ってバランスがいい。しかもお名前が杉咲花さん、だっけ? うろ覚えだが、何役であっても、『花束を君に』が聴けるこの番組で花の名前がキャスティングされているだけで嬉しい。あと何週の組み合わせかは知らないが、この三姉妹の今後がおおいに楽しみだわ。