無意識日記々

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tickets to none

転売NOを主張するサイトが立ち上がっていたので、チラッと見てきた。賛同するアーティスト一覧の所にヒカルの名前があるかを確認しに行ったのだが、パッと見、なかった。ちと気が楽だ。

チケット販売に関しては、昔「オフィシャルでフルオークションしたらええやんか」と提言したので繰り返すまい。需要に見合った価格と供給量を設定するというのは商いの基本だ。そういった事を考えずに「転売NO」に賛同して名を連ねているとするなら、心配になる。熟慮の上でなら問題はないが。

チケット転売問題はCCCDに似ている。コピー・コントロールコンパクト・ディスク。若い人は知らないかもしれないが、『DEEP RIVER』発売当時、ヒカルサイドでも議題に上がった、「複製防止機能のついたCD」である。正確には"CD"のブランドを名乗れなかったので通称だと思っておこう。結果、ヒカルサイドの判断は「音質が低下するから不採用」という事でついぞ宇多田ヒカルCCCDには接点がなかったが、個人で楽しむ事にすら支障が出る(何しろ、データを吸い出せないので転送すらできなかったりなのだ。できたりもする。)レベルだったので、ユーザーからの反発は非常に大きいものだった。先述のように"CD"のブランドを名乗れなかったのだが、「再生するとCDプレイヤーが故障する可能性がある」という話まで出た。CDじゃないものを入れりゃそりゃあねぇ、とさ。

勿論、ヒカルサイドも、複製に関する諸問題を放置していいと思っていた訳ではない。海賊版NOなバナーもHPに貼ってある。CCCDの仕様に問題があっただけだ。ただ、運がよかった。CCCDを採用したミュージシャンサイドは評価を下げたからね。少なくとも上がる例は稀だった。ユーザーには損しかない。

転売NOも、構造は同じだ。転売を全面撲滅したら、急用ができた時に友人にチケットを譲る事もままならない。余っているチケットを格安で手に入れる事も出来ない。ユーザーの利便性は、個々には凸凹はあるものの、総体的には低下する。価格と供給を調整するシステムを放棄するのだから妥当な帰結だ。


やや問題を単純化し過ぎた。しかし、ユーザーの利便性を損ねて業界側の利益を確保しようという構図は変わらない。商売は売買両方が対等だと考える私なので売り手側が権利を主張するのは全く構わないが、CCCDと同じく問題なのは、売買両サイドにお互いに対する不信感が増えて取引が停滞して業界全体が沈下する点だ。そこをもっと丁寧にしないと、転売NOの主張自体には聞くべき所は沢山あるのにまた不毛ないがみ合いを見せられるとしたら憂鬱である。誰に何を言うでもないけれど、事は穏便に運ばれて欲しいものだ。