無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

原盤権話

考え過ぎないように自分を律するには「けものフレンズ」でも観るに限る。第7話はいよいよ図書館に到着という事で相当バズったらしいが、頼むから過大な意味をこの作品に求めないでくれ。ぼーっと頭を空っぽにして眺めているのがいちばんなのだから。小津作品みたいなもので、ただただ映像を流しているだけで心地よい。本当によく出来ている。仕事が丁寧とは集中力が途切れない事だ。身を委ねられる強さがあると言ってもいいかもしれない。

けもフレは小津ファンには是非観て欲しい。詳細な解説は今回避けるが、互いに王道なだけに相通ずる魅力が沢山ある。実写かアニメかなぞ猪口才な。ひとこと、笠智衆vsサーバルちゃんである。麗しい。


さてさて、移籍でひとつ気になるのはバックカタログの扱いである。EMI時代の音源の原盤権は、3/1以降どこに在るのか。これはEMI/Virginとヒカルの契約の内容に依拠する話なので、ヒカルが持っているかもわからないし、EMI/Virginが持っているかもわからない。なにしろ、あんまりにもビッグ・アーティストなので契約のパワーバランスが常識とは異なっている可能性がある。しかし取り敢えず、通常通り原盤権がEMI/Virginに残ると考えてみよう。

とすると、宇多田ヒカル関係のコンピレーション作りたい放題である。前に、「もしかしたら『First Love 15th』のような記念盤のリリースが無くなるのではないかとちらっと書いたが、実は逆なのである。原盤権を保持するとはそういう事だ。EPICとは異なるスケジュールで、好きなように過去作品をリリースすればよい。流石に売れないだろうが、『First Love 20th』を再来年発売したって構わない。そこから『Distance』や『DEEP RIVER』の20周年記念盤を順次リリースしていく、とするとここからファンのニーズと合致する。更に今EMI/VirginはUniversal傘下なのだからIslandレーベルでの作品『EXODUS』『This Is The One』との連動も可能だ。2019年から12年間のひたすら「20周年記念盤」を7枚8枚9枚とリリースする事も出来るのである。原盤権さえ持っていれば。

Utada The Best』によって、『EXODUS』『This Is The One』の原盤権がUniversalにある事が明らかになった。ヒカルが『同日発売は私の本意ではない』とどれだけ訴えようが退けられた。原盤を作ったのはHikaruなのに、と思うところだが、制作費用を出資したのがUniversalなのだ、といえばわかりやすいか。幾ら社長や社員が働いて利益を出そうが、株式会社というのは株主のものであるのと同様、原盤も、幾らミュージシャンが頑張って作っていようがその権利は出資者=レコード会社にあるのだ。EMI/Virgin時代の音源も、同様である可能性がある。

著作権や原盤権は、売買が出来る(少しおおざっぱに言っている)。中には、原盤権をレコード会社から買い取るミュージシャンも居る。やはり自ら作った音源は自分の自由にしたいものなのだ。

果たして、今回EMI/Virgin時代の宇多田ヒカルの音源の原盤権は、どこに行こうとしているのか。SCv1の動向を見ればわかる通り、ヒカルの原盤は黙っていても利益を生み出し続ける打出の小槌である。誰も引き渡したいだなんて思わないだろう。

例えば、原盤権は置いていくからスムーズに移籍させてくれ、という交渉も可能だったかもしれない。ない話ではない。

なお、仮にヒカルのバックカタログの原盤権がEMI/Virginにあるままだとすると、ヒカル本人でさえあの『Automatic』や『First Love』のトラックを自由に使えなくなるので、どうするかというと、昔の曲を再録音したりライブ・バージョンを収録したりして音源を新たに作り出せばよい。

少し話がややこしい。あクマで原"盤"権は、録音された音源に関する権利だ。抽象的な「曲」や「詞」は、創作者であるヒカルの自由にしていい。勿論LIVEで昔の曲を歌うのも何も問題もない。それどころか明後日からは所属レーベルと同族会社である出版社(とジャスラック)がその権利を管理するのだから話のわかりやすさはグンと上がる訳である。

まぁつまり、もしヒカルが原盤権を置いてきたとしたら、ニューアルバムを作る前にスペシャル・ライブを催し、代表曲をたんまり歌って収録し2枚組のライブ・アルバムをリリースすれば、過去の名曲の(自由に使える)"音源"が手に入る事になるのだ。やってくれていいですよん。

勿論、原盤権がヒカルのものになっていたとすればこの限りではない。残念でした。現実は果たして、どうなんでしょうね? 明後日には、わかるかもしれません。