無意識日記々

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バカンスという日本語

で、ちゃんと続き。バカンスの話。

バカンスは外来語だが、元々は英語ではなく、フランス語由来である。vacancesという綴りからもわかったかもしれないが。英語においてはバケーション、vacationですわね。基本的な意味は同じ。

しかし、さっき「バカンス」をWikipediaで見てみたら「フランス人の長期休暇」とほぼ言い切っていた。いや、でも、確かに。日本人にとって「バカンス」というと、なかなか手の届かない、優雅な長期休暇が思い浮かぶ。"夏休み"も長期休暇といえるが、大体は自分ちで過ごす。バカンスと言われるとどうしても「リゾート地で羽根を伸ばして」みたいになる。やはり、手が届かない感じ。

フランス人にとってのvacancesは、自分たちの文化である。日本人にとってのお盆休みみたいに、「自分たちらしい休みの取り方」である。しかし日本人にとってのバカンス、こうやってカタカナで書くバカンスは、手の届かない、遠い国に対する憧れの気持ちを反映した言葉だろう。これだけ意味というか、単語に対する感情がアルファベットとカタカナで異なる例も珍しいのではないか。アイス・クリームとice creamじゃ同じ食べ物しか思い浮かばないし、ザ・ビートルズTHE BEATLESにだって大した違いはない。しかし、vacancesとバカンスではこうも違うのだ。

『二時間だけのバカンス』の「バカンス」は、その意味においてコッテコテの日本語なのである。決してこの歌のタイトルは「Two-hour-vacation/vacances」にはならない。なぜなら、ここで歌われている『バカンス』は紛れもなく憧れだからである。歌詞に耳を傾けてくれれば、そこは自明だろう(と言って肝心の解説は省略する所存)。


『Fantome』がフランス語なら「vacances」もフランス語だが、『バカンス』は日本語である。結局、『Fantome』収録曲はそれも含めて曲名が総て日本語であると言い切ってよい。

とはいえ、ヒカルが「日本語縛り」を意図していた訳でもないだろう。字面としての日本語にこだわったのならfeat.やwithみたいなのはくっつけない。堂々と「椎名林檎と。」と書くだろう。タイトルが総て日本語なのは結果論であるとみる。

となれば、次の新曲のタイトルがどう来るかは興味深いところだ。勿論予想なんて出来ない(誰が『道』なんてタイトルを予想できたか)けれど、シンプルな解釈は出来る。もし日本語タイトル曲であったなら、「嗚呼、レコード会社は移籍したけど、ヒカルの創作モードは連続しているのだな、素直に『Fantome』の続きに創っているのだな」と私は解釈するだろうし、もし英語タイトルであったなら、「おや、変えてきたぞ。レコード会社を移籍して心機一転というところか」と解釈するだろう。どちらになるかな〜?

どちらでもない、というのも有り得る。まず、フランス語タイトルだ。いちばん連呼されるアルバムタイトルをフランス語(『Fantome』...本来はoにサーカムフレックスがつく。すっかり無視してますけどね私。)にしたのだからもう何も怖くない。これから『Fantome』って歌作ったっていいんだし。

更に違うパターンも、なくはない。エド・シーランの「+」「×」「÷」みたいに記号で来るかもわからないし、LED ZEPPELINの4枚目みたいにそもそもタイトル表記がないかもしれない。いやヒカルはそういう方向に行く子じゃあないんだが、可能性は手にしなくても無限に広がっているというだけで人に影響を及ぼす。視野を狭める必要はない。


でも、いちばん有り得る筈の、もしかしたらもう日常会話くらいお茶の子さいさいかもしれないイタリア語が影も形もないってどゆ事なんだろね。こちらはヒカルにとって「身近な言語」になったのか「遠い国の言葉」なままなのか。いつかそれも訊いてみたいぜ。