無意識日記々

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「同型」且つ「同調する」主題歌なのだよGoldは!

ふぅ。前回のお陰で随分すっきりした。また普通の日記が書けるよ。

さてそのSpotifyインタビューではヒカルが当初杏演じる(An Angel?)紫夏のエピソードに基づいてなら主題歌を書けそうと思っていた事についても語ってくれていた。原作既読組からすればそこらへんは既定路線だったようで、なるほど私も映画を観たので「確かにここがメインの映画なら宇多田ヒカルの作風とよく似合っていたろうなぁ」と合点がいった。単純に、人が死んで喜ぶ後半より人が死んで悲しむ前半の方が歌を作りやすいよね。ヒカルが「敵の首魁の首をとって“これで自分の名が中華に轟く!”と喜んでる歌」とか歌えると思います? 無理っすよねぇ。

前半だけならバラードバージョン作って終わらせてたろうけど、派手な後半があるから元々のダンサブルな後半を活かした、というのが多分作曲の経緯になるだろうな。『Passion - after the battle -』の発想にも近いかもしれないが、つまり、あれだよ、シンエヴァの時と同じく、「映画の物語の構成と楽曲(と歌詞)の構成を同型にした」んだと思うよ今回のヒカルも。

(シンエヴァの話はこちらの当時の日記を参照のこと)

https://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary/e/4a736a1a71926ac179e0485629b84e94

そして更に、だ。ヒカルはこの『Gold ~また逢う日まで~』に於いて、そこに『あなた』を映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」に提供した時の手法も組み合わせているように思えるのだ私は。即ち、映画にのめり込んだ状態で1番の歌詞を聴かせ、エンドロールと共に徐々に現実の世界へと戻っていく観客の心理に呼応する歌詞を2番で聴かせるというあの手法だ。

(同じく当時の日記を参照のこと)

https://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary/e/6751a510a69b386f747cc75d42bf4354

つまり、宇多田ヒカルは、今回『Gold ~また逢う日まで~』によって、その4分余りの長さで2時間を超える映画「キングダム 運命の炎」全体の構成を振り返りつつ、エンドロールを見つめる観客の終演時の心理の推移を見抜いて巧みに同調し誘導し、更に次作たる「キングダム4」への期待感を煽りながら楽曲を終え、結果的に「タイアップ相手からは独立した宇多田ヒカル2023年の新曲第1弾」を全く芸風のソリの合わない映画を観終わった人達に聴かせて絶賛を浴びるという、トリッキーというには余りにも鮮やかで且つ余裕を感じさせるお手並みで、この入り組んだコラボレーションに対してシンプルな答を提供したのだ。結果我々は「いい映画だったね!」と「いい歌だったなぁ…。」というやはりシンプル極まりない感想を口にすることが出来たのである。

DESTINY 鎌倉ものがたり」でのエンディングでの『あなた』による心理誘導にはほとほと感心させられたし、『シン・エヴァ』はおろか旧劇新劇総てのエヴァンゲリオンを四半世紀毎丸ごと振り返ったかの『One Last Kiss』の曲構成の見事さにも感動を禁じ得なかったが、まさかこの『Gold ~また逢う日まで~』ではその2つの手法の合わせ技を見せてくれるとはね。どないなっとんねん。ヒカルに限界は無いのだろうか。それでいて喋り声はあんなに可愛いのだからホントもういろいろ勘弁して欲しいぞ40代女子ッ!