無意識日記々

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曲順の価値

冒頭に先行配信曲5曲を並べる布陣、大胆だなという第一印象だったのだが、考え直してみるとこれが案外基本に立ち返ったものなのではないかな、と思い至った。

フルアルバムは長い。12曲もあれば一時間前後。この長さをひたすら音だけ聴いて過ごせる人なんてなかなか居ない。「いやそんなことないですけど」という声が次から次へと聞こえてきそうだが、この日記を読めている時点で貴方には忍耐力や集中力があるのだ。こんな読者に対して親切心の欠片も無い文体を前にして怯まないのだから。それはそれとして。

話を戻すと、1時間集中するのは根気が要る。しかし初めて聴く際、冒頭に既に知っている5曲があれば、ここはかなり気楽にすり抜けられる筈だ。人によっては「配信でもう随分聞き込んだから」とまるごと飛ばして6曲目から聴き始めるかもしれない。まぁそうなる為には『誓い』がここから1ヶ月の間に先行配信されなくちゃなんだけど。

つまり、後半にアルバム曲(未発音源)が固まっている事で一気にそれらを堪能できるという訳。もうそこからが本番だと言わんばかりに。

そういう風に捉えてみればこの『初恋』というアルバム、ダウンロードはおろかストリーミングが主体になりつつあるかもしれないご時世において、CD世代すら飛び越えてアナログ・レコード世代の感性まで感じられる。A面B面というヤツである。

A面には既に皆の知っている曲を並べ、B面にはまだ聴いた事のない曲を並べる、という前後半2部構成のアルバム。実にアナログっぽい。これならもうあの凛々しい正面顔を大写しにしたジャケットのアナログレコードをリリースをしても問題無いだろう。SONYさん出してくれませんかね。

これで、随分気軽にというか、肩の力を抜いてアルバムを聴ける筈である。前半の"お馴染み曲"群でリラックスして後半に備える。初聴きの時、後半の6〜7曲を相手にすればいいので30分程度で済むだろう。一時間気が張り詰めているよりずっと楽しめるんでないか。

どこまで狙ってそういう構成にしたかはわからないが、結果としてそうなってるよと告げ受け止めさせてうただこう。そして、このアルバムの曲順の真価が本当に問われるのは、聴き込まれて愛されてどの曲のお馴染み度も大体大差なくなった時である。そうなって初めて全12曲での構成美を理解できる。果たしてこの曲順は本質的な強さを備えているか、その時に見極めたい。