無意識日記々

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『君が見ていた世界』が描く世界

映画に照らし合わせた時、『Good Night』の歌詞、1番の冒頭は素直に聞ける。というか『愉しげに埃が舞う 久しぶりに開いたアルバム』の一節は、エンディング・テーマとしてとても汎用性が高い。何にでも合う、はちょっと言い過ぎにしても、過去を振り返るシチュエーションを簡潔に情緒豊かに言葉少なに描いたという意味でそれだけで名文。

ペンギン・ハイウェイ』の内容が関わってくるのはその次、『Hello 君が見ていた世界 謎解きは終わらない』からだわね。この、『君が見ていた世界』ってのが絶妙で、『僕』の知っていることと知らないこと、『君』の知っていることと知らないこと、その対比をここまで少ない文字数で表現しきるかね。何より、劇中のお姉さんは必ずしも「何でも知っている人」ではない(つまり、羽川翼とは違うのだ…い、いや、同じ、なのか(笑))。そこのところがまた『君の見ていた世界』との符合を強くする。そこには、謎めいている筈のお姉さんの目線からも「僕の見ていた世界」が現れているのだという視点の相対化がある。お姉さんはアオヤマ君に謎かけしながら自分は自分で悩んでいるのだ。

だからこそ『謎解きは終わらない』。お姉さんから見たアオヤマ君も存在しているということにアオヤマ君が気付いているかいないかの微妙なラインを『Good Night』は歩いている。

また、この「気付いているかいないかのアオヤマ君」が小4のアオヤマ君なのか二十歳のアオヤマ君なのかを考えるのがまた楽しい。気付いていて『この頃の僕を語らせておくれよ』と言っているなら随分図々しいし、気付いていないまま言っているとすればなんだかまだまだこどもなんだなという気がしてくる。あの、こどもが「大人も自分と同じ一人の人間なんだ」と気付く瞬間の尊さを念頭に入れながら『Good Night』を聴き直してみるのも面白いと思う訳だわさ。