スマッシング・パンプキンズが今月末二枚組の新譜を出すということで先行配信されていたアルバム一曲目にあたる“Colour Of Love”を聴いた。即座に“Stand Inside Your Love”を思い出す。ヒカルが『めっちゃ私好み』と力説していたあの曲だ。
よくわからない歌詞の言葉の選び方と狭い音域を動く割に存外にメランコリックなメロディーラインはほんとそのまんまで、20年経ってもビリー・コーガンは変わらないんだなぁと思う反面、ややダンサブルなアレンジに今の時流を睨んで手元の手札を切ってきた感触もあり、なんだか変わらないものと変わったものの両方が味わえる新曲であるなぁと。
あたしは特にスマパンのファンというわけでもなく。“Heavy Metal Machine”は好きだけどね。ネタ曲。それでも、“Stand Inside Your Love”は「ヒカルの好きな曲」として強く印象に残っていた。
昔の歌を聴くとその当時のことを思い出す、なんてのはよくある事だが、新曲を聴いて昔の歌を思い出し、それが他者の好きな歌だからという理由で記憶に残っていたのがこうして引き出されたというのは、何とも奇妙で新鮮な体験だ。人の目を、耳を心を通して20年の時を経ても不変な感性を浮かび上がらせる。音楽って不思議。
話がややこしくなってるので整理すると、“Stand Inside Your Love”がそもそも2000年発表で20年前の曲、それをヒカルが好きだとメッセに書いたのが2007年5月27日の事だから13年余り前、そして“Colour Of Love”のリリースは今年だ。スマパンのニューアルバムは今月末、未来の話になる。
https://www.utadahikaru.jp/from-hikki/index_54.html
時系列にすると色々と混乱するが、音楽を中心に捉えるとそれは非常にシンプルな風景だ。個性あるソングライターが昔と変わらず歌を書いている。それだけのこと。
音楽と時間の関係は本当にとても不思議で、リズムは輪廻のようだしメロディーは未来の記憶のようだしハーモニーは空間の同時性そのものだ。一瞬の混乱が尊い。須らく身を委ねる事にするか。ヒカルの『Time』が昔を思わせる曲調なのも、音楽の不思議から導き出されたものなのかもしれないね。