無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

過去の『国家公務員』の話を書こうか

で、ヒカルの場合、発言より歌詞がプチ炎上……まではいかなかったかな、物議を醸した事が何度かある。そのうちのひとつが今日発売15周年を迎えた『Keep Tryin'』の一節、

『将来、国家公務員だなんて言うな

 夢がないなぁ』

の部分だ。

これ、イラッと来た人は結構色んなものに毒されてると気づいてないんだろうな、と当時は思ったものだ。2010年11月23日にヒカルにしてはかなり詳細にいろいろとツイートしてくれている。

https://twilog.org/utadahikaru/date-101123/asc

なかでもここらへんかな。

『なんか「国家公務員になれば安定した収入があっていい、だから国家公務員になりたい」みたいな考え方に違和感感じてたのかな、私。仕事に誇りを持ってる公務員さんに失礼じゃない?と思って。』

……なんかこの言い方でもトゲがあるな(笑)。

あたしなりに解釈するならば、こうだ。「公務員」てのは身分の話で、仕事の内容に言及していない。これを夢だと語るのは、意地悪な言い方をすれば「いいご身分」になりたいだけで、何らかの仕事を成し遂げたいという気持ちが伝わってこない、と。もっと言えば、例え全く内容が同じ仕事でも、公務が民営化されたらもう辞めるのかということだ。日本でも例えば鉄道や郵便事業が国営から民営に移ったが、それで「将来、国家公務員」と夢を語る貴方は鉄道会社勤務や郵便事業従事を目指すのを辞めるのか?というね。

でも、現実としてそれ(安定した身分)が目的で国家公務員を目指すこどもって沢山居るというか、最大多数派なんだということを多分15年前のヒカルはあんまりわかってなかった気がする。仕事には厳しい人だからねぇ、身分に安穏として真面目に働かない人には厳しい。英文インタビューでもそこらへんは力説していたなぁ。どこでだっけね(……探すの諦めました)。

そこのギャップを埋めないとここの歌詞の誤解は解けない。とはいえヒカルは

『Keep Tryin'出した後、公務員の妻って人から「CD全部捨てた、もう二度と歌は聞きません」とのメールが来て「うわ、めっちゃ勘違いされてる」と思って、誤解を解きたくてラジオで色々話したの、懐かしいなぁ。でも歌詞って説明しても意味がないんだよね。歌詞は歌詞なんだな。』

とある意味諦観していたりもする。そうなのよね、毎度言ってる事だけど、音源をひとつの作品として不特定多数相手にリリースする以上、そのパッケージにアクセスするだけでちゃんと伝わらないのならそれはもうどうしようもないのよ。それでも誤解を解きたいならイントロの前に「この歌の歌詞は……」って解説を音声で付け足しておくしかないわね。それはみんな嫌だろうぜ。キプトラ聴く度に言い訳聞かされるのって……いや、毎回ヒカルの声で喋りが聞けるのか、それはそれで……(←重度の中毒者なので相手にしないように)。

15年経ってこの国の労働環境/状況も随分変わった、のかもしれない。この歌のこの一節も、時代と共に受け取られ方が変わっていきそうだ。極端な事を言えば、この国が民主主義国家から共産主義国家にでも鞍替えしたりすれば「国家公務員」の意味も全然違ってくるんだもんね。

いつも私ゃ時代の遷移による「恋愛に関する人々の意識の変化」については語っているけれど、この歌のこの一節の場合、「仕事に対する人々の意識の変化」が歌詞の解釈に影響していくんだな。結構なレアケースかもしれない。

この歌『Keep Tryin'』は2006年当時auの音楽サービス「LISMO」のスタートに合わせて発表された。何しろ初っ端にLISMOユーザー相手200万回無料ダウンロードサービスされたからね。インパクトは抜群だった。それも今は昔だね。この間はPHSサービスがほぼ終了して『Movin' on without you』の歌詞が過去に彩られる事になったのだけど、このキプトラも色んな時代の色に彩られて輝きを変えてきているのかもしれないな。いやはや、歌は世につれ世は歌につれ、ですわね。