先週末シスター・ロゼッタ・サープというミュージシャンを初めて知ってしまいまして。以来毎日ヘビロテ。
8年前の『Kuma Power Hour with Utada Hikaru』でヒカルがシアトルのソウルデュオTheesatisfactionを紹介した時に
『自由の国アメリカ」とはいえ、女性で、黒人で、レズビアンでっていったら、もうすごいよね。「どんだけマイノリティやねん!」みたいな。』
https://tower.jp/article/feature_item/2014/03/17/0704
とコメントしていたが、シスター・ロゼッタはアメリカ人で、女性で、黒人で、バイ・セクシャル或いはパン・セクシャルで、更にギタリストでロックンロールなゴスペル歌手というマイノリティの極みみたいな人だったようだ。しかも1938年、昭和13年のデビューなんだと。古い! Theesatisfactionはなんだかんだで21世紀のアーティストだが、戦前デビューの歌手でこの属性満載ぶりでは当時一体どんな逆風が吹いていたのやら。そんな彼女がマヘリア・ジャクソン(こちらも『Kuma Power Hour with Utada Hikaru』で紹介されていた → https://tower.jp/article/feature_item/2014/03/17/0702 ヒカルが歌をコピーしたという偉大なゴスペル歌手だ)がブレイクするまでは唯一といっていいレコードが売れたゴスペル歌手だったというのだからいやはや時代は混沌としていたんだろうな。例えば英国だと当時は同性愛者は犯罪者だったというしなぁ。なにもかもがとても凄い。
昨年“Black Lives Matter”ムーブメントの発端となった例の事件の評決が先刻下ったようだが、まだまだ現実には21世紀になった今でも黒人はマイノリティとして差別を受けている。LGBTQ…への認知も高まっているとえこちらもまだまだ道半ばだ。それを考えると、80年前に女性として黒人としてクィアとしてロックンロールギタリストとして(女性で黒人で、は現代でもすごく珍しい)力強く前に進んでいたシスター・ロゼッタとは一体どんな人だったのかと興味が湧くのだが、彼女の再評価は2017〜2018年のロックンロール・ホール・オブ・フェイムへの殿堂入りを切っ掛けとしたもので、まだまだ始まったばかりらしく記事や資料がかなり少ない。若き日のエルヴィス・プレスリーが憧れた話でといい、少年のリトル・リチャードをステージに上げたエピソードといい、かのチャック・ベリーが「俺なんてシスターの猿真似でしかない」とまで言ったというそのとんでもない先駆者性が、今の今まであたしが知らない程度の(それを基準にするのも傲慢極まりないけれど)認知しか得られていなかったというのだから、色々と想像が膨らんでしまうのだけれども、将来彼女がエルヴィス並の知名度になった暁には、漸く、女性も、黒人も、性的多様性も、まともな市民権/人権を得られた事になるんだと思うので、(私には珍しく)シスター・ロゼッタには有名になって欲しいなぁと願わずにはいられないのだった。人類の進歩の象徴だわ。
そんなお勉強的な歴史的な事情は全部置いたとしてもシスター・ロゼッタ! 歌が抜群に上手い! ギターソロがカッコイイ! 何よりリズムセンスがロックンロール!!! バックストーリー抜きで、シンプルに聴いてて楽しい人です。嗚呼、途端に惚れちまったぜ。