無意識日記々

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VOGUEの話:肯いて促しただけ

ヒカルが人間活動やロンドン生活を語る際に「銀行口座開設・携帯電話契約・住宅賃貸契約」といった話題を出すのは日本語英語問わず最近のインタビューではテンプレ化していて、今回のVOGUEでも同じくだりをくりだしていた。

そこで私はおぉっ!?と一瞬目を奪われた。スーさんがそのテンプレ発言のあとに

「それは息が詰まりますね。」

とそっと返したからだ。これ自体はなんてことない、話の途中の合いの手とか相槌とかいうヤツなので、この後もヒカルはそのまま話を続けるのだが、ここを見て私は「いやぁ、そりゃあいいインタビューになるわなぁ」と感心してしまったのだった。

…と、いうのも、同じくだりでゼイン・ロウは、Apple Radio 1のインタビューの時に全く異なる反応を見せていたからだ…って嗚呼、間に合うように訳しといたらよかったなあのインタビュー!(後悔)

要約すると、彼は、業界人らしくというかなんというか、「そこまで日本で空前絶後の成功を収めておきながら、そこでキャリアを離れてわざわざそんなことをするだなんて! 寧ろビッグになったらそういった雑事をしなくて済むのがいいんじゃないの? そこが君の凄いとこだよ!」という反応を示したのだ。プロのミュージシャンなら、サラリーマン(?)がやるような由無し事から離れて華やかな成功を収めて然るべき、みたいな価値観が背景にあるのだろうことを窺わせる反応だった。こういった彼の表情をみてヒカルも

『そういう世俗的なこと(worldly things)に無駄なエネルギーを費やす必要はないですよねぇ』

と優しく同調して返してあげていた。わかりますよ~変ですよねやっぱ、みたいなニュアンスだ。

ところがスーさんは、おおいに引っ掛かったゼインとは全く対照的に、ここをサラッと流してきやがった訳だ。「そらせや」という感じに全肯定して続きを促して(想像)。

なので、ヒカルが同じテンプレを話しても、それぞれのインタビューの展開はここから全く違っていった。ゼインの方は更にヒカルがもう一度人間活動の意義を説明する感じになっていったが、スーさんの方は直後にヒカルの

『人目を気にしながらだと本当の行動に感じない』

という一歩踏み込んだ発言に繋がっていった。差が出たな、と両者のインタビューを比較して痛感しましたよ、えぇ。

なお、全編でみれば、ゼインの方はゼインの方で大変に興味深い。このテンプレ発言に対しては、という話ね。

スーさんは─私は彼女のインタビューを読むのは多分初めてなのだが─、こういう間合いの取り方がいつも絶妙なのだろうな、と私は唸らされましたですよ。言葉少なにヒカルの発言を次々に促していく。誌面の構成は実際の会話の順序通りとは限らないとはいえ、ヒカルがするすると話せていた光景がありありと浮かぶ、大変素晴らしい手際の記事ですわ今回のVOGUEのヤツは。