無意識日記々

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2004年と2022年の間に補助線を引こう

「アルバムを2枚毎で捉える」と、『BADモード』は恐らく次のアルバムとペアになるだろうと前回予想した。が、同作にはもうひとつ別の流れが合流しているのだ。UTADAの『EXODUS』である。

『LSAS2022』で並み居る『BADモード』の楽曲群に加えられた2曲は何れも『EXODUS』からの楽曲、『Hotel Lobby』と『About Me』であった。スタジオライブ収録時点で『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』と『気分じゃないの(Not In The Mood)』が完成していなかった為そのポジションを埋める意図があったかと思われる。

何故選ばれたのが『EXODUS』からの楽曲だったのか。ポイントは2点、「英語詞」と「エレクトロニック・サウンド」だ。そういやヒカルは「エレクトロニカ」って言う事も多いかな。

御存知のように『BADモード』は日本語と英語の区別をしていない宇多田ヒカル初の本格的なバイリンガル・アルバムである。タイトル・トラックのように日本語歌詞をメインにしながら英語詞を混ぜてくる曲もあるし、『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』のように英語詞をメインにしながら日本語歌詞を混ぜてくる曲もある。『Find Love』と『Face My Fears』は日本語バージョンと英語バージョンの両方があるしな。自由自在なのである。

そして、エレクトロニカ。『EXODUS』は、その後に宇多田ヒカル名義でリリースされる『ULTRA BLUE』と『HEART STATION』のエレクトロニカサウンドの源流になっている。故に、アルバム『BADモード』で意図的にエレクトロニカ成分を増量するにあたってこ「原点回帰」するにはそれら2作より『EXODUS』が相応しかったのではなかろうか。

あ、『LSAS2022』で『Hotel Lobby』と『About Me』が選ばれたのには他にも色んな理由がありそうではあるのよね。バンドメンバーが全員英語圏なので、わざわざ加えるなら英語詞の歌の方がやりやすかった、というのもあったと思うし。あと、その時点で朧気ながら『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』や『気分じゃないの(Not In The Mood)』の曲調のイメージもあったのではないか。『Hotel Lobby』と『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』は、“リゾート気分”が共通しているし、『About Me』と『気分じゃないの(Not In The Mood)』は、何れも気持ちのアップダウン(どちらかといえばダウン寄り)について歌った歌だ。まぁこちらは、2021年12月28日まで歌詞がまるで決まらなかったので、「プライベート色の強い歌」くらいの大雑把なイメージしかなかったのかもしれない。

話が大分逸れた。『BADモード』の作風を語るときに『EXODUS』の要素を忘れてはいけないという話。もっと象徴的に言えば、

「昔のヒカルが作ったら『Hotel Lobby』になっていた所が、今作ると『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』になる」

という感じだろうか。なので、次作への展望を語る上でも、『Hotel Lobby』と『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』の間に補助線を描いて捉えるのがよいだろう。

そして、『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』の歌詞には、前にも触れた通り、作った順番のせいか『Find Love』とテーマが共通な所があり、その『Find Love』も、『EXODUS』の『The Workout』なんかの色合いを想起させる所がある──なんて話をしながらここまで来ている。『EXODUS』は『BADモード』を語る上でとても重要な作品なのである。

つまり、ここからの展望を眺める意味でも、『Find Love』や『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』や『気分じゃないの(Not In The Mood)』といった楽曲のサウンドと歌詞を、『EXODUS』のサウンドと歌詞を睨みながら聴いていくのがいいんじゃないかなと、いうことで今後の日記の流れが決まるんじゃないかなど思ってます。

そういや昔、夏場に3ヶ月近くかけて『EXODUS』の歌詞の解説と考察を続けたんだっけ…1曲あたり10回とかそんなんで。懐かしい。今年の夏もそんな感じになるのでしょうか。こればっかりは、書いてみないとわかりません。はてさてどうなることやら。