無意識日記々

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『something strong』って、何?

ずっと気になっている事があって。『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』の歌い出しの

『Give me something strong enough』

の“something strong"って、何?という話。

ヒカルって英語を話すときにstrongという言葉を余り使わない。いっちゃん最初に作って世に出した曲の名前が『I'll be stronger』だったにもかかわらず! いやまぁ、単純に力を誇示するような言い回しをしないからだとは思うんだけどね。そんなヒカルが『Find Love』で

『Getting stronger isn't easy baby』

『楽して強くなれるわけないじゃん』と歌い、『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』で上記のように

『Give me something strong enough』

「十分に強い何かを下さい」と、強さ、強くあることについて立て続けに歌ってきたのは、目立った。

果たしてこの「強さ/strength, something strong」とは何なのか。

『Find Love』の場合、ヴィッキーとのトレーニングについて歌った直後なので「カラダを鍛えて強くすること」という風に解釈するのが素直だろう。丈夫さ、頑健さなどの「強さ」だ。勿論比喩としても使われてるだろうがそれは今は置いておくとして。

では、『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』において欲せられてる「強さ」って、何?

これは、離れた友人と旅の計画を立てるワクワクを歌った歌だ。その冒頭で例えば腕力的な強さについて歌うのは何だか違うよね。健康を維持して旅をしたい、という意味にとろうにも、『オーシャンビューの部屋一つ予約♪』のウキウキテンションとその方向性が合わない気がする。なんだか、そういう身体的な強さではなさそうだ。

では精神的な強さのことかな?というのがまぁ妥当な解釈だろうかな。例えばヒカルは英語のインタビューで「愛とは何か」について語ったときに、

「愛は自分を強くもするし脆くもする」

と答えていた。この時の「脆く」は"vulnerability"だ。『Find Love』の歌詞に出てくる

『Do I dare be vulnerable ?』

のvulerabeの名詞形だわね。「傷つきやすさ」。これの対比として"strong"という単語を使っている。となると、何かあった時に傷ついて落ち込んでしまわない強さのことなのだろうか? これはちょっとあるかもわからない。

『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』は、全世界的な感染症禍も念頭に置いた曲だ。みんなで家に籠もって塞ぎ込む時期が長くなった。そんな折に、「遠方の友達と旅行の計画を立てる」その楽しさを歌ったのがこのマルセイユ。全編大体軽快な曲調ではあるのだが、いつものヒカルと同じくちゃんと「願いと祈りを込めた歌」なのだ。どうか事態が好転して、遠くの友達とも旅先で会えるようになりますように、というね。

それであるならば、この歌の冒頭で欲する強さは「逆境にめげない、折れない」精神的な強さのことだと解釈してもよさそうだね。

この曲はアルバムのラストを一旦飾る楽曲だが、アルバム冒頭の『BADモード』は、自分の周りで落ち込んでいる大切な人達を励ます歌だった。そんな頼もしい彼女も、実はこうやって、不安と戦いながら自らに「強さ」を求めて努めて明るく振る舞った上での『よ・やっ・くぅぅ~♪』のハイテンションを作り出しているとするならば、これまたなんとも魅力的な人だなぁといういつもの結論に辿り着く。アルバムの最初と最後が対になっているというか。宇多田ヒカルという「人」がよく見える2曲と、なっている。

皆さんは、この『something strong』って、何だとお思いでしょうか。ひとりひとり、自由に考えて貰った方が、いいかもわかんないねこのテーマは。