『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』の歌詞についてヒカルはインタビューでこんな風に語っている。Kはインタビューアの落合健太郎氏、Hがヒカルだ。
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K: 例えば『Automatic』の歌い出しとかもそう、『な・なかいめの』っていう歌い出しとかの時からも、あ、これがもう、ビートで捉えてるのかなとか、思ったりもしたんですけど。
H: ま例えば、英語で今回のアルバムの中でいうと、「あ英語でもそういうことやるんですね!」っていうコメントを見掛けたんですけど、えとマルセイユ、『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』っていう曲で、冒頭の方で英語で『Maybe I'm a - fraid of love ~♪』って、"afraid"っていう、「怖がってる」という言葉を"a-fraid"って区切ってる、んですけど、そういうことをすると、英語だと1つの言葉の中で、その、syllable ? えっと、音節で一瞬こうブレスを入れたり、声が途切れたりすると、あ間(ま)が空いたっていう感じはするんですけど(以下省略)
https://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary/e/9f8a2557fd80ad57cbc220721a9eea93
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そう、英語でもやってしまうのだヒカルは。デビュー曲の片割れ『Automatic』でいきなり有名になった“歌詞の区切りとメロディの区切りを合わせない技”を。みてみよう。
『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』の冒頭の歌詞は、歌詞カードだとこういう風に書かれている。
『Give me something strong enough
Give me something strong enough
Maybe I'm afraid of love
Say I'm not the only one, only one
Say I'm not the only one
Say I'm not the only one, only one
Say I'm not the only one
Say I'm not the only one, only one』
同じ言葉の繰り返しが続く、ある意味わかりやすい歌詞である。しかし実際の歌の区切りはこうなる。
『Give me something
strong enough Give me something
strong enough Maybe I'm a-
-fraid of love Say I'm not the
only one, only one Say I'm not the
only one Say I'm not the
only one, only one Say I'm not the
only one Say I'm not the
only one, only one』
── いやほんま、どこで切ってんの!?
これ、耳で聴いてると文章の意味がまるで入ってこない。あたしゃ最初『only one Say I'm not the』を『only one ( is ,as you ) say, I'm "another"』だと聴き取っていた。「唯一無二。言うなれば私は“別の何か”なのです。」と。これで何か歌詞として意味が通ってしまうから困る。実際に目で見て読んで仰天したわ。「私はただひとりではないと言おう」でしたか…。
またここでヒカルが"the"をonlyの前なのに「ジ」と発音せず「ザ」と歌ってるからますますわからない。いや、theとonlyが離れてるからこれはこれでいいんだけども、でも耳馴染みが無いからやっぱり聴き取れない。
そして上記の"afraid"に到っては全くもう何が何やら。"I'm a ..."ってきたら不定冠詞の"a"なんだと思うじゃないですか。次は名詞が来ると思うじゃないですか。で、そこで来るのが“Fried of love”?「愛の揚げ物」??? なんのこっちゃでしたよ全くもう。
そして1番大胆なのは、ここよ。
『-fraid of love Say I'm not the
only one, only one Say I'm not the
only one Say I'm not the
only one, only one Say I'm not the』
文章どころか段落跨いじゃってるよ! 歌詞カードでは改行して一行空けてるとこ繋げて歌っちゃってるよ! 『な・なかいめのべ・るでじゅわ』はまだ同じメロディの中の区切りだったけど、今回は別段落を股に掛けて区切りを変えていらっしゃる。大胆にも程が有り過ぎますヒカルさん。
しかし、これがクセになるのよね。意味の通る文章として聴き取ろうとしなければ、この巧みに半音上げ下げするメロディに乗る歌詞の響きのトリコになっていく。なんなんだろうねこの効果。もうこの曲は出だしから魔法が掛かってるとしか思えないのです。