無意識日記々

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一昨日の呟きの補足(4K化の話)


─ 見事期待に応えてより鮮明に、より美しく生まれ変わってくれました🥹 が、同時に送り手側の苦悩も鮮明になったかな…。クリア過ぎると神秘性が薄れる、ぼやけ過ぎると荘厳さが薄れるという微妙なバランスの中で、画面サイズを4KではなくQHD?にしてきた辺りに苦心の跡が窺えました。お疲れ様でした🥺

https://x.com/i_k5/status/1771513500394795240?s=46


あ、↑これ私の呟きね? Twitterの140字ではこうやって圧縮して言ったけども、『FINAL DISTANCE』の4K化は、なかなかの難産だったのだと思われる。


まず、↑でも書いてある通り、画面サイズが小さい。全画面表示をしても、動画の端が画面の端まで届かない。周りが黒いままってことね。これはつまり、ディスプレイ目一杯で再生できない→「4K対応画面でも4Kでは再生されない」ってことだ。


4Kってのは大体横のピクセルが4000くらいの画像・動画のことだ。縦は2000くらい。大抵、縦横には「3840 x 2160」(16:9)が選ばれる。で、『FINAL DISTANCE』はこの縦横の数字がもっと小さいのだ。正確な値はわからないが「2560 x 1440」とかそんなんなのな?


厳しいことを言ってしまえばこれは「4K化できなかった」ということには、なる。しかし、もし素直に4Kにしていたら、恐らく今より動画は美しくなくなるのだろう。これがきっと最善なのだ。



このような方法をとった理由は主に二つ考えられる。


ひとつは、元々の映像の解像度が低い可能性。先日の『Automatic』の4K化がわかりやすかったが、ヒカルのアップの画面ではかなり精細にアップコンバートできていたのに、引きの絵になると(Hikkiの引きの絵に、と書こうとおもったが辞めておいた(結局書いとるがな))途端にぼやけるというか、そこをちゃんと復元してこそアップコンバートやろがいと思われるかもしれないけれど、オリジナルの引きの絵が一定度以上にぼんやりしていたら、如何に昨今のAIでも復元は難しい。もし時間があれば、AIにヒカルの総ての高解像度映像を読ませて解析させそれに基づいてアップコンバートすれば可能だったのかもしれないけれど、3ヶ月で22本ともなると予算も時間も足りなかった事だろう。自前でAIに学習させるって今幾らくらい掛かるんだろうか。半年も経てばあっというまにディスカウントされるのが現代だから下手なことは言えないのよねぇ…。


…話が逸れた。『Automatic』ではぼんやりした元動画のぼんやりぶりをそのまま残すだけで済んだが、『FINAL DISTANCE』の画面は『Automatic』より遥かにごちゃごちゃしていて、様々なモノや人が映り込んでいる。これを低画質な元動画に倣って4Kにアップコンバートしたら、多数の「本来そこにはないモノ」が生成されてしまって始末に負えなくなったのかもしれない。これが考えられるひとつめの理由。


もうひとつの理由は、ちゃんとAIを駆使したら復元は出来たのだけど、今度は「画面が鮮明になり過ぎた」のかもしれない、というものだ。『FINAL DISTANCE』は、繰り返しになるけど、ひたすら画面が凝りに凝っていて、至る所にいろんなモノやヒトが写っている。それらが渾然一体となって、精微の粋を集めてひとつの画面に纏めて提示することで、圧倒的な荘厳さを演出しているのがこのPVの魅力だ。が、4K程にまでクリアに映してしまうと、人の顔とかモノの粗とかが見えてきてしまって、唐突に「リアルな現実の物体や人物の集合体」に見えてしまうのかもしれない。「ひとならざる者たち」に見えていたのが「山田!山田じゃないか!こんなところに居たのか! こっちは鈴木だ!久しぶりだな!」みたいな風にみえるとか、得体の知れないオブジェがコップに紙を貼り付けたものだとわかってしまうとか(単なる喩えだよ実際にPV内にあるわけじゃないよ)、そうなったら世界観ぶち壊しである。極論すれば、宇多田さんすら宇多田さんに見えてはいけない。登場人物に見えなくてはいけない。そういった幻想的な雰囲気を維持する為には、ちょっとメイクや小道具や背景の精度が粗かったりしたのかもしれない。


当然、当時としてはそれでよかった。収録する解像度以上の精微な小道具を揃えるほどの予算や時間をわざわざ費やすならもっと他のところに注力すべきだった筈だ。時間も予算も有限だからね。正確な数字は知らないが、もしかしたらこの『FINAL DISTANCE』は思わぬ低予算で作られているのかもしれない。次の『traveling 』や、その次の『光』の次の『SAKURAドロップス』では随分予算が上がったという話もしていた筈だし。(…どこでだったっけ?)


なので、この『FINAL DISTANCE』の4K化に於いては、上記いずれの理由であれ、画面が小さい事を嘆く必要は無い。製作陣がベストを尽くしてくれた結果なのだから。今後何年かして更に技術が進展し(或いはより容易に技術が利用できるようになり)新しくアップコンバートする機会が来るかもしれないが、2024年に於いてはこれがベストだったと、そう言えるだけの美しさに仕上がっている。このあと、近い世界観の『SAKURAドロップス』の4K、更にはDVDシングルが当時驚異的な大ヒットを記録した宇多田ヒカルのヴィジュアル面での代名詞的PV『traveling』も(4/4に)控えている。楽しみはまだまだ続いていきますね。嗚呼、堪りませんわっ。