無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

To Your Room

一昨日のヒカルのツイート。

@utadahikaru:今夜から始まる!オファーをいただいてから原作のコミック読んだらすごく面白くて、引き受けちゃった posted at 20:52:37

率先してオンエア日のオンエア時間に間に合うように(ちょうど二時間前だから予定通りなのだろう)呟いていて、いつもとは違う態度をみせてくれた。それだけタイアップ先を応援したいという気持ちが強いのだろう。NHK_PRの1.5倍のフォロワ数だしな。効果は高い。

4月3日のエヴァについてのツイート、

@utadahikaru:今まではネタバレがいやで台本読みたくなかったんだ[emoji:331] posted at 11:47:56

との対比が鮮やかだ。片や台本を読まずにおおまかなプロットだけに基づいて。片や原作を読んだから引き受けた……。何がどこで必要になるかはその時々で違ってくる。

裏を返せば、原作を読んで面白くなかったオファーは裏でしっかり蹴ってるんだろうなと。宇多田ヒカル相手に「あわよくば」とオファーを出すケースがあっても不思議ではない。どちらかというと「無理だろー」とハナから諦めてるケースの方が多いかもしれないが。オファー出して断られて、じゃあ次に頼む人には「宇多田ヒカルに断られたので貴方にお願いします」なんて言えるわけもないのだし。

そんな裏事情は知りようもないけれど、ヒカルにOKを出させるほどに「不滅のあなたへ」の原作は魅力が強い。検索してみてもアニメは大変好評で、何語かすらわからない言及も幾つも見られていることから国際的な人気を獲得しているのがみてとれる。今の時代日本のアニメも世界規模の配信事業が核となっている感があり、特にこの「不滅のあなたへ」は無国籍/多国籍風味が強いので、「部屋に入る時靴を脱ぐのか」「あの四角い箱に入ったお昼ご飯は何なんだ」みたいな事にもならず幅広く受け容れられる可能性もある。一方でその癖の強い作風は敷居の高さになるかとも思ったが、杞憂に終わりそうで何よりだ。

ここは宇多田ヒカルにオファーした制作陣のセンスを称えたい。今のヒカルの歌詞世界観にシンクロすると見抜いたのは慧眼というしか。まぁあたしはマガジン読んでないので作品の存在すら知らなかったのだけれど、確かにこの作品の死生観、生命観というのは独特で、東洋風とか西洋風とかの括りにあてはまらず、デビュー当時からそのどちらについても歌詞に反映させてきたヒカルからしたら刺激的な作品だった事は想像に難くない。

例えば『愛のアンセム〜Hymne a l'amour』では、原曲の「死後にまた結ばれよう」という歌詞に対して「生まれ変わってもあなたを」という歌詞にちょっとだけ変えている。西洋的な終末観を東洋風な転生観に置き換えたのだが、『不滅のあなたへ』という作品はそのどちらもあてはまらない。勿論ファンタジーだからというのはあるのだけれど、そこに『PINK BLOOD』の歌詞はどう絡んでくるのか。

今公開になっている部分にはまだ生や死について直接歌われている部分はない。一方で、第一話のエンディングで流される事も見越してか、『あなたの部屋に歩きながら床に何個も落ちる涙』という失われていく命たちへの趣もしっかりみせてくれていたりするのだけれど、歌の他の部分の歌詞にどのように生と死の影が投げかけられているのか、今のうちに想像を逞しくして待ち受ける事にしておきたい。

6秒て。

でまぁ昨日アニメのエンディングで歌が流れた後ヒカルのオフィシャル・サイトもリニューアルされて壁紙まで更新された。UFOに連れ去られる人か連れ去りに来た女神様かというアーティスティックなアー写で、ヒカルも気に入っているのだろうツイートまでして誘導した。この間ラスキス仕様になったばかりだというのに展開の早いことといったらもう。流石にまだTwitterのアイコンは変えていないようだけれども。

この流れだったら、いつもならオフィシャルYouTubeでオンエアで聞けた分位はすぐさま公開になると思うじゃないですか。ならなかった。代わりに?MVが一瞬だけ流れる「ティザー映像」がオフィシャルYouTubeに投稿された。しかしキミ、6秒て。

“ティザー”というのは英語でteaserと書く。「じらす人」という意味だ。これからティザー広告というのは……もうWikipediaからまるごと引用した方が早いな。

ティザーとは「本来、広告で伝えるべき商品についての要素のいくつかを意図して明らかにせず注目を集める広告手法」のこと、だそうです。

今回つまり新しく撮影したミュージック・ビデオのほんの片鱗だけ見せて焦らしてくれよう、ということなのだろう。が、これ、これでいいの? もうテレビでは歌自体ががっつりワンコーラス流れてる中で、映像の続きを隠したい&期待感を煽りたいのはわかるんだけど、YouTubeにオフィシャルで音源置いとかなくていいの? ここで再生回数ごそっと稼いでみんなのところにどんどんレコメンドとして推薦されまくる流れ作らなくていいの? 『One Last Kiss』ってYouTubeでのブレイクが柱だったと思うんだけど、それとは全く異なるやり方を試したいのだろうか。

既にYouTubeには市井から沢山のカバーバージョンが投稿されている。この24時間以内にアップロードされたものもある。これが現代のスピード感な訳で、MVへの期待を煽るのと音源の注目を集めるのは同時並行的に行うべきだったのではなくって? これだけカバーがあるのに本家本元の音がオフィシャルで手に入らない、と??

昨日はテレビで放映されたということで字幕放送では歌詞の表記も公表された。だったらもうリリックビデオでもよかったんじゃねーか。YouTubeに音源が欲しかったなぁ。オンエアされたとこだけでいいのにねぇ。

とまぁ余計なお世話な心配もしつつ。

来週からこの歌でフシの物語が幕を開けていくかと思うとゾクゾクするなぁ。

『サイコロ振って出た数進め

 終わりの見えない道だって』

もうこれほんとフシの行く末そのもので。こんなにフィットする歌を歌ってくれてもう余は満足至極ですじゃ。

ミュージック・ビデオはヒカル出演のものとなった。即ちアニメ映像じゃなかったのだからまるで「不滅のあなたへ」と関係ないものになるのだろうか。『桜流し』なんかはタイアップ先とは独立した作風のミュージック・ビデオが創られた。そういった手法に倣うのか。はたまた実写とはいえ何らかの繋がりのある映像になるのか。そこら辺も気になるんだけど、結局6秒じゃ何もわからん。現時点で19万回近く再生されているなティザー映像。この歌は、これからですわねぇ。

To Your High Quality

漸く待望のTVアニメシリーズ「不滅のあなたへ(To Your Eternity)」の第1話が放送になった。なんとまぁ、原作へのリスペクトなのか作品への自信なのか、原作第1話をそのままアニメ化してきた! 少年がただ独り言を言い続けるだけの初回を。アニメ化って第1話のインパクトが大事だからアバンだけでも派手な導入部をもってきがちなんだけど、そういうことは一切せず。いや勿論自分のような読者は「球」から始まるイントロダクションで一気に引き込まれたからそういう層に対してはそれで正解なんだけど、全国ネットの地上波放送でそれをやってくるとは驚いた。

その自信を裏付けるかのようにアニメのクォリティが高い! 作画作画カロリーが高い! 来週以降息切れしやしないか心配だがやはりこの作品、「進撃の巨人」や「鬼滅の刃」などと同じく「アニメが素晴らしくて原作を読んでみたら絵がそんなでもなくてガッカリ」な路線に入ったようだ。いや、下手でもなんでもないんだけど、このアニメ化はそれくらいの落差を生んでいる。

少年役の声優さんの演技も非常に練られていて。一言々々が考え抜かれていて感情の流れを表現する事に長けている。特にこの第1話はほぼ一人芝居ということで会話のリズムなど皆無な中でぐっと視聴者を惹き付け続けた。以後の展開は更に(声優にとって)難局続きだがこれなら期待できるかもしれない。

そしてやはりサウンドトラックの威力よ! フルオーケストラのみならずバンドサウンドまで取り入れて「今ときのアニメサントラに制限なんかあると思った?」と言いたげな全力投球ぶり。そんなに気合い入れていいのかという位気合い入っていた。あんまりにも壮大に盛り立てるのでついつい「劇場版クォリティ」という言い回しが頭にチラつく。いやはや、時折カロリー過多の作画や迫真の主役の演技を食ってしまうほど前面に押し出された劇伴の数々。ただ主人公が家から出て一本道を歩いていってそのまま帰ってくるだけの展開を劇的に飾り立ててたねぇ。凄いよアンタ。

という約23分間を経て津田健次郎のおなじみの低音ナレーションからの『PINK BLOOD』であった。ほんの一瞬、「この劇伴の後に奏でられてサウンドがしょぼかったらどうしよう」という考えが頭を掠めたが、それも出足の一音で雲散霧消する。高品質な作画・演技・劇伴を駆使した演出の数々など単なる前座だったと言いたくなるくらい、「いやあんたこそ王座やんか」と思わず呟いてしまったくらいに神々しさに満ちていた。なのに歌詞はわかりやすく親しみやすく優しい。もう慣れっこかもしれないが、作品の先の先まで見通した作詞の神憑りぶりにも嘆息させられた。サウンドは『誰にも言わない』で学んだ事が活かされていた。そして、タイトル連呼するタイプの楽曲だったんですね! そうきたかという感じ。未だに『PINK BLOOD』が何なのかはよくわからないが、エンディングの入り方からすると桜吹雪というか血飛沫というか、『散り去る時の血の美しさ』みたいなことなのだろうか。公開になった部分の歌詞だけではまだまだわからなかったかな。

あ、前も触れたと思うけど、今回は第1話だったからエンディングで流れただけで、次回からはオープニングで流れると思いますよ『PINK BLOOD』は。本来のエンディング・テーマは次回が初お披露目になるのかな。それはさておき。

そして、何より驚いたのはヒカルのツイートがオンエアに間に合ったこと! そして自分の新アー写を自らツイートしたこと! Instagramの方は更新されていないようだが、それにしても珍しい。エヴァなんて二十日経過してから漸くMVに触れるとかそんなんだったのに。これはかなりアニメをプッシュしたい≒原作漫画を気に入ってしまった、ということでいいだろう。こちらとしては歌を予め聴いていてこれはもう全巻読んでるなと確信してはいたが、こうやって本人がちゃんと言ってくれるとやはり雲泥の差だわ。

何もかもが高クオリティの確認作業に過ぎなかったけれど、それでもこうやって目の当たり耳の触りにするとグッとくるものがある。第一話からよくよく知っている話なのに柄にも無く感動してしまった。次はもうマーチが出てくるのよね? あぁもうダメですごめんなさい。来週からリアルタイムで観ないかもしれないのでそこのところは宜しくお願い申し上げ奉り候。

To Your ETV

『PINK BLOOD』に関してはもうただ聴くだけという感じなのでタイアップ先の「不滅のあなたへ」の話をしとくか。

主人公「フシ」のコンセプトが秀逸。その一点に尽きると言ってもいい程。生命の定義は難儀だが(恐らく未だ誰も出来ない)、「進化」という枠組みを自然界で考える時「複製/Copy」という要素はクリティカルであると考える。自然淘汰によってより複雑な、「あたかも設計図があったかのような」構造が自発的に発生する為には大量の複製とその失敗を環境と相互作用させる必要があるからだ。

「生命」は進化し複雑な構造を持つ何かであるとするなら複製は不可避的に必要、という前提を踏まえた時、フシの「不死」というファンタジックな属性は、複製を単一の個体で実現していくという極めて特異な物語を呼び込んだ。思いっ切り踏み込んで言えば「もし生命が孤独だったら」という仮定のもとに物語が作られたということだ。

勿論、相互作用する環境の中に複雑な構造がなければいけないという意味において言えばフシは「進化」をする訳では無い。が、個体としての「成長」が「複製」によって為されていくというプロセスはファンタジーの中に「生命とはなにか」という問いを、非常に時間的に圧縮した中に込める事が出来る仕掛けになっている。毎日ランダムな方向に輪廻転生しているようなものだわね。

他方、「複製」と「不死」を「痛み」という感覚、或いは感情と結びつける事でこの物語は普通の浪漫譚へも変貌する。なので、アニメーションとしても普遍的に受け入れられる可能性はある。もう単純に、フジの設定が理解されるかどうかにかかっている。

その中で『PINK BLOOD』がその理解の助けになるかどうか、なるとして、どれくらいわかりやすくそれが達成されているか、だ。恐らく宇多田ヒカルファンの殆どは来週からアニメの方は観ない。だが、タイアップ・ソングとしての“機能”の威力を実感する為にはある程度物語を追わねばならないだろう。そして、歌が物語の助けになっている事が確認出来れば、なぜこの歌がこうなのかを知ることが出来る。

歌がなぜこうなのか。そんな事は知らなくても歌は楽しめるし、歌に感動する事も出来るだろう。ラジオやら何やらで『PINK BLOOD』を初めて聴いた場合「不滅のあなたへ」には一切触れないリスナーも多く出るだろう。いやそちらの方が多数派になるかな。そうなってもこの歌は不自然を撒き散らしたりはしない。タイアップを全く知らなくてもこの歌はいい歌だ。何の問題も無い。

一方で、なぜ今この歌なのかという一歩踏み込んだ疑問を抱きたいのならば、少なくとも二〜三話は「不滅のあなたへ」を観た方がいい気がする。もしアニメが原作と同じ構成で始まるとすると最初は全く盛り上がらないし、つまらないと思われても致し方ない。そこをほんのちょっと踏ん張って、主題歌の為にひと月ほど付き合ってくれれば、ヒカルの事をもうひとつ深く知れるかもしれない。たった今の予感と予想だと、そういう風な感じかな。ともあれ、一度位は観てみてみておくれやす。

この桜血飛沫が耳に入らぬか

今夜遂に『PINK BLOOD』初オンエア……というタイミングで、なんですか、『One Last Kiss』EPがオリコンチャートデイリーアルバムランキング4月10日付けで1位返り咲きですってか。推定売上枚数1384枚。

https://www.oricon.co.jp/rank/ja/d/2021-04-10/

ふむ、タイミング的には映画を観に行った人がエンディングに感動して、といったところでしょうか。興行収入70億突破のニュースも追い風になったのかな。昨日日曜日には庵野秀明総監督も出演した舞台挨拶生中継もあったりで、『One Last Kiss』EPももうひと伸びあるのかもわかりません。

その舞台挨拶で庵野秀明総監督が「エヴァはロボットアニメ」と言い切っちゃったそうな。ヲタクの息の根を止めにかかる(のだが逆に鍛える結果になりますますヲタクの濃度が増していくという)芸風はますます健在ですねぇ。これもまた話題になってよきかなよきかな。

そういう“前の曲”の話題がまだまだ尽きない中でこうやって更なる新曲『PINK BLOOD』の発表を迎えるのだから贅沢な話で。といっても我々は昨年、『Time』のリリースから僅か3週間余りで『誰にも言わない』を受け止めて生き残っているのでこれもなんとかなるだろうてさ。その上昨年は「五週連続インスタライブ」という昇天必至の企画も耐え抜いた訳で、我々もまた鍛えられていると言わざるを得ない。その分何も無い時の飢餓状態がキツくなるのだが、その禁断症状覚悟で今宵は新曲を迎え入れなくてはならないだろう。

さて曲調については既にアニメPVのバックで流れているサウンドで推し量れるし、公式からも今夜は「TVサイズ」で流される事がツイートされたので、あとは楽しむだけといいますか。歌詞が「不滅のあなたへ」にフィットしているのはもうわかったし─いや、聴く前からそこも大丈夫だろうとは思ってたし、なんだろな、素直にもう新曲を聴けることを心待ちにしておける心境といいますか。エヴァに対するようなプレッシャーもないし、アニメファンや原作ファンは概ね歓迎ムードなので、、、ある意味話題性がないのかも(笑)。

去年も『Time』の評判の割に『誰にも言わない』は話題にならなかったし、そういう波があるのも承知の上だわな。ただ、流石に今度ばかりはミュージック・ビデオ無しというのはやりづれぇ。『誰にも言わない』はギリギリCMソングということで音の鳴ってるYouTubeあるにはあったけど、NHKで放映されるアニメの主題歌だとなぁ。ダブルタイアップということもないと思うし、プロモーション訴求&遡及が限定的になる感じはあるかな。

と、いう周囲の状況とは別に、純粋な「宇多田ヒカルの新曲」としての期待度は非常に高い。メロディアスで内向的でシックでエモーショナルで切なくて。周囲の状況の分何も考えずに真正面から受け止められそうで、それはそれで貴重な時間だ。アルバム発売となると先行シングルの役割は重要視されるしね。ほんに、いいタイミングでの新曲リリースになるんじゃないでしょーか。肩の力を抜いて参りましょ。