Wild LifeのOpeningは示唆に富んでいる。Single Collectionのジャケットが描く星々煌めく宇宙から野生(wild life)の満ちた大地の夜明けへとシームレスに繋ぐ展開で、アクシデントによって不時着する場面は印象的だ。漫符表現は海外のファンのみんなに通じるのだろうかという一抹の不安はあるが、この到着は意図した目的地へのものではなかった事は作り手側としても強調したかった点だろう。
即ち、この二夜は長期間に渡って予め計画されていたものではない訳だ。会場のブッキングが遅すぎて平日しかとれなかったというエピソードからもわかる通り、ジョンレノンの命日とデビュー記念日に会場が確保できたのは偶然の幸運である。尤も、我々現代人は偶然とは本当は何であるかなんてまだ知らないのだが。
不時着先でギガントが川辺に佇む場面もまた印象的だ。漫符すら馴染む浮き世離れした造形とリアルな景色との対比は、絵本で川の向こう岸にリアル熊親子を眺めていたそれを思い出させる。あの時くまちゃんが向こう岸に見たのは行き場のない"怒り"の感情であり、彼はそのまま家に引き返すのだが、今Wild Lifeに於いて彼が見たのは壮大な夜明けであった。それをどう解釈するかは、コンサート本編をじっくり見て各人が感じる所だろう。
最後に頭がもげるのは(他の言い方はないのか)勿論そのまま生身のライブに突入する為の繋ぎでもあるのだが、漫符的世界観の内部に潜むWild Lifeの象徴である事も抑えておくべきだろう。"意図しない到着"によって外部に自らの内面(と同質な世界)を発見する。これは光の"行き当たりばったり"即ち「行き当たってバッタリ出会う」生き方そのものであり、この公演に賭けた全身全霊ぶりの直接の表現であるといえるだろう。