『Flavor Of Life』(今回は総てバラード・バージョンの話)発表から16年か。昨年は『First Love』が大変話題になったが、そこから8年後に発表された同曲のブレイクなくして『First Love』のリバイバルもなかっただろう重要な1曲である。「宇多田ヒカル中興の祖」とはよく言ったものだ(…誰が言ったの?)。
ライブで『First Love』の次に歌う曲、というのは非常に示唆に富んでいる。『Laughter in the Dark Tour 2018』ではその任は『初恋』で、意図は明らかだった。その前、『WILD LIFE 2010』でそのポジションに据えられたのがこの『Flavor Of Life』だった。なかなか出来ることではないですよ同じバラードで『First Love』の後だなんて。
なおその他のライブも含めて『First Love』の後に歌われた曲を列挙すると以下。
『Movin' on without you』@Luv Live 1999
『Wait & See~リスク』@Bohemian Summer 2000
『Addicted To You』@MTV UNPLUGGED 2001
『Deep River』@ヒカルの5 2004
『Devil Inside』@UTADA UNITED 2006
『Can You Keep A Secret?』@Utada In The Flesh 2010
『Flavor Of Life』@WILD LIFE 2010
『初恋』@Laughter in the Dark Tour 2018
これらは明確に2つの傾向に分かれる。
『Movin' on withou you』
『Wait & See ~リスク』『Addicted To You』
『Devil Inside』
の5曲は「バラードタイムから仕切り直してライブに勢いをつけていく楽曲」であり、いずれもシングル曲だ。特に宇多田名義の4曲はいずれもミリオンセラーであり、しっとりとした『First Love』で一旦ピークを迎えた雰囲気を知名度とテンポ感で切り替えていく為の選曲であった。一方で、
『初恋』
の3曲は、いずれもその時点での最新作からのバラード・ナンバーだ。誰もが『First Love』でコンサートのハイライトを迎えたと思った所に「同じバラードでももっと自信のある曲が出来たよ」とヒカルが言いたかった楽曲たちなのである。『First Love』の威光の凄さは昨年皆で再確認したかとは思うが、アーティストとしてヒカルはそれ以降もそれ以上の自信作を作り上げ続け、それを真っ向から提示し続けてきたのだ。天下を取りながら全く天晴れな進取性極まる気性と言えるだろう。
そういう意味では、昨年のNetflix「First Love 初恋」のブレイクでヒカルが動向を気にしていたのは、もしかしたら『First Love』以上に『初恋』の方だったのかもしれないね。でもま、まだリリースから3年半しか経っていないのでリバイバルというタイミングでもないので、こういう感じになるのも予想通りだったかもしれないわ。それ以上に『First Love』の大ヒットぶりに吃驚しているのだろうかな。