無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

サウンド志向思考試行(3)

ポリフォニー、対位法といっても大バッハのように計算尽くのものを想定してる訳ではない。楽器が幾つかあって、それらが結構別々に動いている、といった感じの素朴なイメージである。

いちばん象徴的なのはAnimatoであろうか。一応、EXODUSの曲作りはこの曲からスタートした事になっている。静かなマーチングドラムをベースに幾つものフレーズが折り重なっていく様は、宇多田ヒカルでは余り見られないものだ。結局、EXODUSのサウンドは大体そんなポリフォニック且つエレクトロニックな感じで仕上がっていく。

FINAL DISTANCEはそのポリフォニックな手法のルーツにあたる。特殊なのは、それが生楽器であり、なんだかんだでストリングス・アレンジ自体は、あれ誰だっけ、レコーディングは斉藤ネコ氏かな?UnpluggedはGreat Eida Stringsだよね…まぁいいや、正確な所は各自確認して貰うとして、要は総てがヒカルの手によるものではなかった点だけ踏まえればいい。

恐らく、この時点でFINAL DISTANCEのような作品が出来上がる事はヒカルにとって「出来過ぎ」だったのではないか。ヒカル自身も仄めかしていたが、彼女が自分の実力と考えている以上の力がはたらいてこの曲が出来上がったという感覚。これがあった。

ということは。以後光はこのレベルに近付く為に相当悪戦苦闘しなければならなかった。DEEP RIVERはまだ河野圭というパートナーが居たが、EXODUSはぼぼ独力である。自分自身で引き上げてしまったハードルのお陰で苦悩の色濃いサウンドとなったが、お陰でここで随分と成長した。そこからULTRA BLUEHEART STATIONは自信に満ち溢れる作品となった。この時期にはパートナーとして冨田謙を迎え入れていたが、そこでのポジションはどちらかといえば河野圭というよりはEXODUSのTimbalandに近いイメージだ。いや、あそこまで個性強くないか。兎に角補助というかアドバイザー的な役割だった。光はサウンドリエーターとしてほぼ自立したのである。This Is The Oneも、そういった自信があったからトラックメイカーに仕事を任せれたのだ。


という訳で、次のサウンド志向を予想する為に視点を新たに今までの歩みを振り返ってみたが、つまりはFINAL DISTANCEからHEART STATIONまでは音楽家としての光の成長がサウンドに反映されていたのだ。This Is The OneとSSv2はその応用編という色合いが強い。TiTOがああいう作品だったからといってトラックメイキングのアイデアが枯渇してしまった訳ではなく、Goodbye HappinessではSynepgy Chorusとストリングスとダンスビートを組み合わせて玄人共のド肝を抜いている。これなんかは、travelingの疾走感とFINAL DISANCEの神聖さの融合なんていう風にも捉えられる。今や光は自由自在だ。

FINAL DISTANCE以降のサウンドメイキングをひとつのパースペクティヴとして捉えよう。その風景から、今後の方向性がどのようにみえてくるか。何が出来ていて何が出来ていないのか。以下次回。