もう一度、ULTRA BLUE各楽曲の関係性を整理しておこう。並べてみると結構ややこしい。主軸となるのは正反対の楽曲、This Is LoveとBLUEだ。
This Is LoveとWINGSの関係性はわかりやすい。『じっと背中を見つめ抱きしめようか考える』WINGSは、結局抱きつけないのにThis Is Loveではあっさりと『後ろからそっと抱きつく人』になれてしまう。『昨日の言葉早く忘れて』『素直な言葉はまたおあずけ』『あなたの前で言いたいことを紙に書いて』とまどろっこしいWINGSとは対照的に、This Is Loveではスパッと『冷たい言葉と暖かいキスをあげるよ』ともう自分から言葉を届ける事を切り出している。
そうだ、前はこの『冷たい言葉と暖かいキス』について触れていなかった。この取り合わせ自体が興味深いがその説明は後回しにするとして、この冷たさと暖かさというのも、ULTRA BLUEの歌詞世界を紐解く重要ワードなのである。そして勿論それより更にいちばん重要なのは『光』なんだがね。
WINGSには『お風呂の温度はぬるめ』『安心できる暖かい場所で』というフレーズが出てくるし、誰願叶には『冷たい指輪』が出てくる。そしてBLUEには『こんなに寒い夜にさえ』だ。この各曲の温度感。
ここに、『光』が絡んでくる。誰願叶は『冷たい指輪が私に光ってみせ』るし、BLUEでは『遅かれ早かれ光は届くぜ』と希望を託す。そして、Making Loveでは『あなたにふりそそぐ光』とまぁ神々しい。
こうして見ていくと、ULTRA BLUEの本来のコンセプト、"朝と夜のコントラスト"が如何に各曲に浸透しているかがわかる。朝と夜の違いは、光と闇、そして暖かさと寒さと冷たさだ。それらを巧みに組み合わせて、様々な感情のフェーズをヒカルは歌っている。
それらが最終的に落ち着く先が、海路である。『春の日差しが私を照らす』と歌った時の光の明るさと柔らかさと暖かさ。多分作詞者としては漸く徹夜でアルバムを完成させられた感慨を歌っているのではないかと思うが(このアルバムが完成したのは春先である)、この場面はまさに映画のラストシーンのような溜め息が出る。最後に完成させた曲らしい場面形成だ。
この海路の、
『船が一隻黒い波をうつ
たくさんの景色眺めたい
額縁を選ぶのは他人』
の一節の前段階がBLUEの
『琥珀色の波に船が浮かぶ
幻想なんて抱かない
かすんで見えない絵』
なんだよという話を語り直す話を次回はしてみますかね。