Jimmy Jam & Terry Lewis feat. Peabo Bryson(長いわ!)の"Sanctuary"は「ボーナス・トラック」だ。おまけだねぇ。
前回の日記で書いたように、私の中ではKINRINJIの"Keep Tryin'"までがアルバムの本編で、この"Sanctuary"はアディショナル・トラックという扱いである。このトラックの出来云々前に、なんだか雰囲気が違い過ぎて、確かにアルバムに収録するならこの位置かなぁと。
多分、ジャム&ルイスからすれば、ひとりのミュージシャンが活動休止中にその友人たちが集まってトリビュート盤を作ろう、みたいな気楽なテンションを思い浮かべていたのではなかろうか。それが蓋を開けてみたらいずれも一曲入魂の力作ばかり。そんなこんなで随分と浮いてしまった。
わざと辛辣な言い方をすれば"ギャラのバカ高いカラオケ"である。ピーボ・ブライソンについては経歴は日本語版Wikipediaを参照してもらうとして、大ヒットを連発してきただけあって流石の貫禄である。技術的な面からいえば、本作の中では頭一つも二つも抜きん出ている。ジャムルイのアレンジもEnding Versionを下敷きにしてより洗練された、経験豊かなサウンドを構築している。
しかし、選曲が"Sanctuary"というのが痛かった。仕方のない面もある。宇多田ヒカル名義で、或いはUtada Hikaru名義で英語の歌といえばこれとSimple And Cleanくらいしかないなだから。結局Utada名義のアルバムに収録されたので忘れられがちだが、元々PassionよりSanctuaryの方が先に出来つつあったのだから基本的には宇多田ヒカル名義の楽曲なのだった。それはそうとして、少ない選択肢の中から、それは即ち、沖田さんのオブァーの中から選べるのがこの曲だったという事だ。
それにしても、出来上がったアルバムを聴いてジャムルイのお二人は「油断した」と後悔しているのではなかろうか。こういうテンションの作品なら、もっとぶっ飛んでいてもよかったのでは、と。特に、Passion/Sanctuaryはヒカルの曲の中で最もメロディーを捉え難い楽曲だ。それを料理するには熟考に次ぐ熟考が必要だが、このテイクはただセオリー通りにやっている。可もなく不可もなく、だ。歌唱力は、前述の通り、抜群なのだけれど。
彼らにとって不運だったのは、SanctuaryにはPassionのようにSingle Versionが無かった事だ。あのメロディーが生まれた経緯を辿るだけでも随分違ったのだが。これは、でも、もうしょうがないよね。
それにしても、13トラックも揃っていて私の中でいちばん評価の低いトラックがあの天下のジャム&ルイスのものだなんて、なんとまぁ呆れるほどの力作である。宇多うたアルバムは。それを再確認する為のラスト・ボーナス・トラック、それがこの"Sanctuary"だとも、いえるかもしれない。なんかすげぇわこれ…。