無意識日記々

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『First Love』を歌う客たち

前回は「日本以外のファンは宇多田ヒカル名義とUTADA名義は区別していないだろうし、キングダムハーツ関連曲の支持が非常に高い。」という話をした。

それで思い出すのは13年前の『Utada In The Fresh 2010』だ。自分が観たのは初日のホノルル公演だが、土地柄なのか世界的になのか、それはそれは多種多様な客層でね。日本語や英語以外の言語も飛び交うまさに老若男女が集う一夜となっていた。

初日ということでそこまでショウが固まっていなかったのか、途中急遽『ぼくはくま』がワンコーラスだけアカペラで歌われたりして、客席もそれに合わせて歌っていた。ここまでは『WILD LIFE』でもみられていたけれど、驚いたのは『Come Back To Me』と『First Love』も大合唱が巻き起こった事だった。

その時『Come Back To Me』がハワイ地元のFM局で1位を取っていたという情報はあった為、同曲が大人気だろうことは想像がついたが、この聴かせるバラードで俺らが歌うんかい!というのはちょっとした衝撃だった。私はメタラーかので観客合唱は大歓迎なのだがヒカルの歌唱をじっくり聴きたい向きにはどうだったんだろうか。

そしてそれと同等の合唱が巻き起こったのが『First Love』だった。こちらは更に驚きで。いやだって、幾らハワイには日本からの渡航者や移住者、日系人が居るといってもそこまで多数派ではないんだから。私は公演まで最も会場前で待っていた人間なので交わされていた会話の言語に日本語が少なかった事はよくよく承知していた。そんな母語でない日本語で歌われる『First Love』の歌詞をよくぞお前ら…! まぁサビは半分英語だけどね。

ここに至って、少なくともその時ホノルル公演に居合わせた聴衆は、宇多田ヒカル名義だUTADA名義だと活動を区別して捉えてはいないんだなと私は推測したのだった。現地のことはわからないが、他の国々、アジアの国々でも同様な状況ではないかしらん?

勿論キングダムハーツ関連の楽曲も大人気で、『Passion/Sanctuary』は日本を遥かに上回る大歓声で迎えられたし(その日初めての日本語曲でもあったしな)、『Simple And Clean』もセットリストの要所で歌われ…ってこれは日本での『光』も同じか。

ということで、海外のファンは宇多田ヒカル名義からのファンもUTADA名義からのファンもキングダムハーツ由来のファンもそれぞれ居るだろうが、それらは分断されず、彼らはヒカルの実積をひとりのUtada Hikaruの活動として認知している模様だ。

アルバム『First Love』の売上実績は全世界で1000万枚弱といわれているが、日本での数字は765万枚。200万枚以上は海外での売上になる。そしてそのうちの大半はアジア圏での数字だろう。日本より人口が少ない国の方が多いことを考えると、この数字は幾つかの国ではかなり伝説的な威光を発していると思われる。

ここにUTADAでの『Come Back To Me』とキングダムハーツ関連曲それぞれから流入したファンが加わるが、彼らも『First Love』を、同じアーティストの名曲・名盤として認識しているだろう。そういった背景があってのコーチェラでのリスペクトであり、今回のNetflixドラマ「First Love 初恋」のアジア圏での大ヒットだった、というのは押さえておくべき事実…かどうかはわからないが、そういう可能性も結構あるのではないかと思った次第です。

となると、次のツアーでどこを回るかという話になってくるのだがそんな話はまた日を改めて。