深夜アニメが擬似クラウド・ファンディングでローテーション出来ているといっても、それは結局全国ネットのテレビ放送の影響力を頼ってのものであり、それは即ち、深夜ではなくゴールデン・タイムのコンテンツが高い視聴率を得る事によってテレビの影響力を維持してくれているから、というのが前提にあるし、円盤の収益も、熱心なマニアを相手にしたものより一桁も二桁も売り上げるディズニーやジブリといった大衆受けする(した)コンテンツ抜きには語れない。
毎度"大衆"という言葉を無批判に使用しているが、これは相対的な概念であって固定化されたものではない。私のような、端から見て"熱心なファン"は宇多田ヒカルリスナーとしてはその"大衆"になり得ないが、例えばコンビニでカップラーメンを買う、なんていう自分にとって何のこだわりもない行動に関しては"無責任な大衆の一部"なのだと思う。深く考えず、CMや報道のイメージに左右されて気軽に消費したりしなかったりする、そういう人間であるかどうかは、ひとりひとり、その時の着眼点によって異なる。相対的というのはそういう事だ。
宇多田ヒカルは、その、"無責任な大衆"の方を相手にする事でその資産を築いてきた。だから我々は無視されるべき存在なのだというのが前回の論旨だった訳だ。
そして、先程取り上げたアニメのローテーションのようにわかりやすくはないが、音楽業界もまた"無責任な大衆"を相手にしたビッグ・アーティストたちによって支えられている。サザンやミスチルみたいなな。金額ベースだと、更にアイドルやらEXILEグループやらの影響力も大きい。彼らの収益によって、細々とした専門レーベルもリリースを続けられている面がある。
もっとも、それも実際は錯覚かもしれない。大規模レコード会社が潰れても、例えばCDを100円200円値上げすれば専門レーベルも独立採算でやっていけるのかもしれない。こういうのはやってみないとわからない。
だが取り敢えずは、大衆に波及出来る影響力をもった"ビッグ・アーティスト"が必要で、ヒカルはそのうちの一人に数えられていて、我々はそれを見守っている。ただそれだけだ。
その影響力を支えるのがレコード会社の宣伝力であり、全国規模の出版や放送メディアである。この構図を踏まえた上で、じゃあどうすればいいのか、海外に拠点を移すとかインディーズ・レーベルを立ち上げるとか以外のアイデアがないか、ちょっと考えてみたい今週なのです。