無意識日記々

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まずは『初恋』での『肩』から

では3曲の歌詞をもう1度見てみよう。

『狂おしく高鳴る胸が

 優しく肩を打つ雨が今』(初恋)

『日の昇る音を肩並べて聞こうよ

 共に生きることを誓おうよ』(誓い)

『残り香と私の部屋で

 温かいあなたの

 肩を探す

 肩を探す』(残り香)

それぞれにシチュエーションが違う。『初恋』は好きな人が出来てこれから告白するかどうかというところ。『誓い』は好きな人と恋愛真っ只中。『残り香』は終わった恋の物語だ。つまり、恋愛前・恋愛中・失恋後の3段階それぞれで『肩』が登場している訳だ。

『優しく肩を打つ雨』──雨といえば『真夏の通り雨』や『SAKURAドロップス』に登場する『降り出した夏の雨』なんかを連想するだろう。或いは『HEART STATION』の『肌寒い雨の日』なんてのもある。いずれにせよヒカルの歌に於いて雨の表現は主人公の感情と呼応した「現実に横たわる比喩」である。それが『肩を打つ』というのだから、『初恋』での「肩」は自らの感情への気付きの象徴だと捉えてよいだろう。誰かに気づいてもらいたい時に肩を叩いて振り向かせるように、優しく肩を打つ雨は初恋・恋という初めての感情を知った/その存在に気づいた主人公のその“気づき"の具象的表現だといえる。あっさり纏めてしまえば『肩』は現実と感情の結び目にちょうどある存在なのだ。

更に次の『誓い』では…という話からはまた次回。