少し前に「宇多田ヒカルの『光』よりいきなり始まる曲はない」というツイートがバズっていた。確かに同曲のサビから始まるオープニングは鮮烈だ。その『光』は19年前の曲だが、サブスク隆盛の昨今ではサビから始まる曲が結構増えているようだ。最初に惹き付けないとすぐ飛ばされちゃうもんね。
ヒカルもそういった時世を意識してかせずか、例えば2018年発表の(そろそろ“3年前のアルバム”って形容され始めるのかこれ…)『初恋』では冒頭の『Play A Love Song』『あなた』『初恋』と3曲連続で前奏ほぼ無しで歌から入る曲が並ぶ。曲順はいつもヒカル単独で決めるとは限らない(大抵共同プロデュースだし、録音が終わった後のヒカルは疲労困憊で彼らに任せてしまう事もあるようだ)のでヒカルの意図だったかどうかはさておき、如何にも今の時代に合っているというのは結果論としてある。古い言葉だが「掴みはOK」ってところだな。
だがしかし、このアルバム『初恋』は、そこからの各曲の出だしが実に変化に富んでいるのだ。
4曲目の『誓い』はピアノ、
5曲目の『Forevermore』は弦楽隊、
6曲目の『Too Proud』はシンセ・ベース、
7曲目の『Good Night』はアコースティック・ギター、
8曲目の『パクチーの唄』はエレクトリック・ピアノ、
9曲目の『残り香』はオルガン、
10曲目の『大空で抱きしめて』はエレクトリック・ギター、
11曲目の『夕凪』は効果音(!)、
12曲目の『嫉妬されるべき人生』はエレクトリック・ベース、
、、、という風に全部異なる音色から始まる。『Fantome』以上に全体的に落ち着いた曲が多いのによりカラフルで華やかな印象を与えるアルバム『初恋』だが、その印象はこうやって各曲の“かお”とも言うべきそれぞれ最初に出す音がバラエティーに富んでいる事もひとつ大きかったように思う。このアルバムでイントロクイズをやったらカンタン過ぎてすぐ当てられちゃうかもね。