無意識日記々

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コンサート会場にいるような臨場感の由来とは

360Rの強みはその定位情報の精度にある。各楽器の空間上の位置取りが細かい単位で切り分けられる為各楽器が分離よく…というかそもそも別々の場所で鳴っているので分け隔てる必要も無いというか。特に前後方向の情報が正確なので、感覚としては前面のスピーカーが鳴っているというより部屋全体が鳴っている印象だ。

だがそもそも元々の音源が、いや、元々の楽譜自体がこのシステムを想定していない為、その特性を活かしきっているとは言い難い。

例えば『Play A Love Song』などは最後の『Everybody needs sometimes ...』のコーラスなどは最初っからひとりひとりの歌唱を位置情報込みで録音・ミックスしておけば13.1chによって彼女たちに取り囲まれて歌われているような大迫力を演出する事も可能だったろうが、そもそもの音源がそうではなかった為にもっと小さく纏まっていた。もっとも、左右方向の広がりに関してはそこは小森くん師匠、かなりの効果を上げていたが。

更に、そのコーラスに限らず、ヒカルの楽曲アレンジ自体が、特に今回使われた『あなた』と『Play A Love Song』での2曲では空間的に徹底されていたとは言い難く、特に『あなた』に関しては「宇多田ヒカルの独唱」というのが最大の魅力なので13.1chに向いているとは言い難かった。逆に言えば、なのにあれだけ2chとの差を体験させる事が出来るのだからポテンシャルは相当高いと言わざるを得ない。

その為、少し皮肉な事だが、実際に13.1chの効果が大きかったのはヒカルの編曲外の音、即ち聴衆の歓声であった。鳴った瞬間に僕らをライブ会場に転送してくれるあの感覚は、聴衆の出す音が取り囲んでくれるからこそ生まれるものだ。前後左右から多数の人に囲まれて宇多田ヒカルの歌を聴く。確かに、今までには無かったフィーリングだった。

だが、前回も触れたとおりこの試みはまだまだ始まったばかりなのだ。長い目でみる事が必要だ。更に取り組むべき課題も山積だが、話が長くなるのでそれはまた機会を改めて。